このレビューはネタバレを含みます
長い映画だが、どこか暗い魅力のある作品だった。わからないところも多々あるのだけど。
音楽業界の特にクラシックの指揮者で女性となると、今でもかなり少ないのではないだろうか。やはり男性社会と言えると思う。その中で実力がある女性指揮者が活躍していくということは、かなりの圧力があるだろう。
いくら男まさりのターとはいえ、面白く思わない連中はいくらでもいるし、同性ですら応援してくれるわけでもない。ターの孤独と過剰な野心はセットだ。
落ちぶれていくター。部屋を追い出されアコーディオンを弾き狂い笑うところや、ワーグナーを指揮する副指揮者希望だったマーク・ストロングを突き飛ばす姿は、醜く愚かに輝いて最高だ。これはやはりケイト・ブランシェットの演技力かと思う。
SNSで過去の悪業が暴かれていく現象は、
実際に日本でも起こりつつある出来事。
悪いことをしてなくても何が起こるかわからない不気味さが、この映画の暗さを濃くしているようだ。
マーラーのアダージェットの指揮のシーン。余韻がいつまでも続くようで良かった。