てっちゃん

TAR/ターのてっちゃんのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
4.4
こいつはやばいぞと言われていた作品でしたが、劇場鑑賞することなく、配信でも暫く放置しておりましたが、何を思ったか夜映画に本作を選んだのです。
その結果、、

こいつはやばい!!
ものすごい熱量とものすごい完成度の作品でした。
しかも再鑑賞するのには、暫しお時間下さい系作品ではないでしょうか。
これぞ映画職人という手練れ感満載な作品であります。

ケイト•ブランシェットさんの怪演は言うまでもありませんよね。
まるでそこにターという人物がいるとしか思えないです。
ものすごくリアル。
圧倒的なカリスマ性を持ちつつ、成功者たる自信に溢れ、絶対的な権力者であり、それに見合う実績を十二分に持ち合わせております。
音楽と対峙し、音楽と真剣勝負をして、どこまでもストイックであります。
そこにはリスペクトすら感じます。

でも権力者ということは、利用する側であり搾取する側でもあります。
本作ではそこを描いています。
ターの周りには、自分にとってのイエスマンしかいません。
さらに自分と何かしらの関係性がある、あった人たちを起用しています。

しかしながらこの人たちは、本当にターにとってのイエスマンなのでしょうか。
物語の終盤に向かうにつれて、ターの周りはどうなったでしょうか。
利用していると思っていたら、利用されていたのだと思います。
所詮はターの人間性に好意を持っていたのではないのです。
だから"簡単"に離れていくのです。

ターはあらゆるものを失っていきます。
剥き出しになっていきます。
その剥き出しになっていくさま(心情表現)が非常にうまいんですよね。

ターを意識的にとんでもない超人として描かれています。
私はターを超人として途中まで観ていたので、ターの行う周囲に対しての行動が霞んで見えてしまっていました(この人だったら仕方ないかみたいな感じ)。
それでもだんだんとターが剥き出しになっていくに連れて、その霞が消えていきます。
そしてターの"愚かさ"に気づかされました。

物語はある出来事を境として、ターが自身を振り返って(と私は思うようにしました)いきます。
ターはあそこで、全てを剥き出しにされて、自分の原点へと帰っていきます(と思いたい)。
しかしながら、なぜあの場所でなのか。
自責の念があるから?あそこだったら自分の立場が保てるから?生きて行かねばいけないからなのか?

さあどうやって物語が終わっていくのだろうと思っていたら、なんやこれ??
ん?え?まさか?終わりなの?、、って感じ。
で堪らず町山智浩さんの元へ駆けつけたら、そういうことなのか!!でも知らんし!!って感じ。

とんでもない映画を観た後の、どきどき感とこれは、、?という戸惑い、何度も頭の中で振り返る傑作でございましたね。

それにしても、クラシックってかっこいいですね!!
観ていてぞくぞくしたし、うっとりしたし、小学生時代に自転車で図書館まで行ってクラシックCDを借りて聴いていたな、そんなことを思い出しました。
てっちゃん

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