ファントム・メナス。


ずっと前から楽しみにしていた作品。

なんてったって あの傑作「イン・ザ・ベッドルーム」&「リトル・チルドレン」以来なんと16年ぶりの鬼才トッド・フィールド監督の復帰作ですから。

シシー・スペイセク、トム・ウィルキンソン。
マリサ・トメイ、ケイト・ウィンスレット。
ジャッキー・アール・ヘイリー。
そして本作のケイト・ブランシェット。
監督の作品に出演した主要キャストのほとんどがその作品でアカデミー賞にノミネートされていることから 俳優から演技を引き出す才能がズバ抜けて素晴らしい監督。
自身が俳優出身というのも大きく影響しているのだと思われる。

世界最高峰のオーケストラ、ドイツのベルリン・フィルで首席指揮者を務め 天才的な能力を発揮するリディア・ター。
キャリアの絶頂にある彼女だが それゆえの壁に苦しむ日々を過ごす。
そんな折 ターのもとに届いた『ある一報』をキッカケに ター の完璧な世界は少しづつ崩壊していく・・・


さて本作。　ネタバレあり。


なんかとんでもない作品と出会ってしまった。
エンタメ性はほぼゼロ。だがこの重圧感。
絶対にこの作品は映画館で観ないとその凄さを体験できないと思う。
(とは言え 早朝に見るには重過ぎるかも？😅)
アカデミー賞にて主要部門に多数ノミネートされたのも納得の傑作！

もう終始ケイト・ブランシェット出突っ張り。
そりゃ 主演女優賞にノミネートされるわ。

仕事、地位、富と名声。
全てにおいて完璧なター。
そんな彼女にファントム・メナス(見えざる脅威)が少しづつ彼女に襲いかかり 彼女も少しづつ 壊れていく。
もう、完全にコレ『ホラー映画』です！
リアル過ぎて コワすぎる！😱

何気ない一言で他人の人生を狂わせる。
得体の知れない『微音』が睡眠を妨げる。
その『選択』が周りの人達の日常を壊してしまう。
もしかしたら経験ある人もいるのでは・・・

『完璧』なだけにその世界を外部の人間に壊される恐怖。
『守る』ために『攻撃』してしまう人間の悲しい性。
この難役をケイト・ブランシェットはまさに『完璧』に演じ切っている。
惜しくもオスカー受賞は逃してしまったが間違いなく今後の彼女の代表作となるだろう。

しかし・・・

その ター という人間性とケイト・ブランシェットの『一人芝居』のインパクトがあまりにも凄すぎて その他のキャスト達がかなり霞(かす)んでしまう。
ターのパートナーの女性、新しく首席チェロ奏者に選ばれた若き女性、ターを苦しめる謎の存在。
もう少し彼女たちを濃く描いてもよかったのでは。

そして。

ケイトがとにかく 喋る 喋る。
膨大な字幕の量。着いていくのは至難の業。😅
159分。ちょっと長いとは感じたが、あくびが出ることは無かった。
完全にターの狂気に見入ってしまった。

ラスト。
コンサート会場での ター のあの表情‼️
もう、ライオンかと思ったくらいの鬼気迫る顔つき。
心臓が飛び出してくるかと思ったくらいの衝撃。

旋律、栄光、絶望、狂気。
あまりのリアルさに実在した人物なのではないかと錯覚してしまうくらい・・・

是非ともこの作品は映画館で観てほしい。



2023年 5月12日 公開初日 8:20〜
イオンシネマ板橋screen 3
💺151席
客入り　30人弱。

本作に感銘を受けた方は'98年の作品
「ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ」
もオススメ。

　逃しましたが、アカデミー主演女優賞ノミネート、
ヴェネチア国際映画祭最優秀女優賞、
ゴールデングローブ賞最優秀主演女優賞、を勝ち取った主演の俳優の迫力ある、圧倒的な演技が注目です。

指揮者を本格的に学んですべての演奏シーンを自身で演じているのは『ザ・役者魂』をみてください。

　
この映画はじまり、クレジット、出演者・関係者の名が先に流れます。
（珍しいスタートですねっ。なぜか、無関係で無関係でなさそうな、クレジットと共に民族的な歌が流れます）

主人公は、成功した指揮者。インタビューステージで（公開放送のような雰囲気）、椅子に座り、音楽トークのシーン。（ここで、音楽世界で私は成功者よっ！トップぶりがわかる トークに態度）
主人公は、私が1番、自由に遣りたいように進める日々。
新人チェロリスト採用も、実力より好み？気になる存在で採用。
そんな中、コンサートリハーサルで忙しく、そこに主人公が指導した、若手指揮者が自殺。忙しい中、巻き込まれることを考え、メールを削除。
様々な出来事が続き、主人公は、徐々に崩れていく・・・・・が、ザックリ前半ストーリーです。

夜になると、メトロノームや冷蔵庫の音、車の音、呼びリンの音、が気になり睡眠不足、精神不安定ぶりが、ホラー映画を見てるかのような、はじめの時の表情と違い『音』によって、怖い表情に変わっていくのは、凄い俳優さんに思えました。

あと、主人公のレズビアンと言うところ。ハラスメント、権力的、ジェンダー、現代的で今時風に設定されてて、面白いところ。

男に負けない。強い指導者の主人公が、どうなって、どんな結末か？
主人公は、幸せな結末か？目撃してください。

終わりのシーンは、指揮者してる所で、いきなり終わり。
『お〰️〰️〰️えっ終わり？』みたいなっ。

もう１度見ないと・・・・・
大きな波がないので、睡眠不足で見に行かないでねっ。

旋律、栄光、絶望、狂気。

トッド・フィールド監督、脚本、ケイト・ブランシェット主演によるドラマ。
ドイツのベルリン・フィルで初めて女性として首席指揮者に任命されたリディア・ターが、若手指揮者の訃報をきっかけに変化していく姿を描く。
主人公となるターをブランシェットが演じているほか、ノエミ・メルラン、ニーナ・ホス、ソフィー・カウアー、マーク・ストロング等が登場。
物語は、エンドロールかのようなクレジットに続き、長回しによるターの講義シーンと、冒頭から中々トリッキーな展開を見せてくれるため、ここだけで、本作品が只者ではないことを感じさせてくれるもの。
何より、監督がブランシェットに向けて書いたとしているように、ター＝ブランシェットであり、一人芝居と言っても過言ではないほど、ほぼほぼターのシーンばかりなのだが、まるでドキュメンタリーを観ているかのよう。
また、クレジットを見てストロングがどこに出ていたのだろうと思っていたら、長髪の役柄だったので全く気づかなかったのも驚きの一つ。
物語自体は、比較的淡々と進行していき、あっと驚くような劇的な展開があるわけでもないのだが、途中から時折ホラーのような演出が加わり、それがターの心境とリンクしていくため、ターの心のさざなみを、あざとくなく観る側に伝えてくる。
特に、クルマの内装から、走行していて一定の速度になると、共振するせいかビビり音が発生するのは、非常に気になるところであり、心の中で、そうそう、と思っていた次第。
徐々に歯車が狂い始めたターの行き着いた先は、確かに想像していなかったものではあるものの、冒頭示される本作品のトリッキーさからすると、納得の結末であるとともに、それをどう感じますかと、作品を通じて観る側の価値観が問われているような気がしてならない怪作。

人マネに栄光はない。