コザカナカルシウム

ツユクサのコザカナカルシウムのレビュー・感想・評価

ツユクサ(2022年製作の映画)
3.2
子供を不慮の事故でなくして自責の念から酒に溺れた小林聡美が、自殺した妻に何もできなかったことを責める松重豊と出会い、自分を許して幸せになる覚悟をする話。

心の機微を、日常のささやかな出来事や伊豆の海沿いの風景で表現した日本映画らしい作品だった。

1億分の1の確立と言われる「隕石にぶつかる」ことから話が始まり、その隕石を海に放り投げて物語は終わる…つまり、隕石にぶつかることと子供の事故という不幸な事故を重ねている。死に囚われて自責し「自分は幸せになってはいけない」と囚われていた執着を海に捨てるメタファー。

料理中に醤油が切れていて困った小林聡美は、自転車のチェーンが壊れているからと、おつかいを嫌がった息子に対して無理矢理買いに行かせた。チェーンが外れてこけた息子が電車にひかれて死ぬという、何ともつらい疵…日常の風景が一転する人生の分からなさが辛い。

息子の死という重いテーマにも関わらず、どこか牧歌的でユーモアや明るさがある映画なのは、小林聡美の友人の息子の存在が大きい。彼は、天文学マニアで義父に抵抗を示して、好きな人のキスを見てしまうという何とも情けない感じで初恋が破れる。この子のサイドストーリーがあることで、子供時代を思い出してキュンとなる。この切なさは篠田正浩監督映画「少年時代」みたいだった。

松重豊と小林聡美のキスシーンが、全然軽いキスなのに生々しかった。松重豊のキスする映画がもっと観たくなった。