チネマエッセ

モリコーネ 映画が恋した音楽家のチネマエッセのレビュー・感想・評価

5.0
今年1月公開の映画で最も注目だった イタリア映画 。想像以上に素晴らしかった。。。

157分の間何度も私は泣いてしまいました。

正直、私自身はモリコーネはあまりに色々な映画に楽曲を提供しすぎていて、作曲マシンのような印象があり、(それと泣かせるメロディックな曲の印象が強いのに、たまにダリオ・アルジェントの作品などにも楽曲を提供していたので、本当にこの人がそんなに異質な音楽作れるの?っていう疑いがあったり)そこまで特筆好きな音楽ではなかったのですが、

もう涙が止まらず、、、

その感動がもたらされた大きな理由は、モリコーネが色々と作曲の誕生秘話を話していくのですが、、いろいろな着想と葛藤と人間関係あり、様々話した後、
有名なシーンがやっと音楽がついた形で流れてくるんです。

このとき「こうしてかの有名な映画音楽が出来上がった」
ではなく、

「こうしてあの映画は誕生した!」という感覚になるんです。

それだけ彼の音楽は各作品に無くてはならないものであったし、彼も素晴らしい映画制作者の一人なんだ、と観客に再認識させてくれるんです。

なので多くの監督や映画制作関連の人々、俳優のインタビューもものすごい量で挿入されるのですが、監督などとくに彼と対等かもしくは師として仰いでいる。その理由が本当に附に落ちる映画の内容なんです。

セルジョ・レオーネとの関係の話なんて面白い逸話がありすぎて、これだけで映画ができそうな勢い。彼なんてモリコーネに音楽を作らせてから、それに合わせて映画を撮っているんです。モリコーネの作曲した音楽を流しながら演じさせたり。信じられません。彼のマカロニ・ウェスタンをまた見直したい。

この編集、演出は ジュゼッペ・トルナトーレの敏腕ならではです。
彼のモリコーネとの信頼関係だからこそここまで掘り下げられ、感動の演出ができたのだと思います。やはりトルナトーレは観衆を泣かせることに本当に長けていますよね。

モリコーネがイタリア歌謡に楽曲を提供していたことや、実験音楽に精通していたことも恥ずかしながら知りませんでした。ダリオ・アルジェント もインタビューで出てきますが、だから彼の映画であんな曲が作れたのですね。

彼は実験音楽をベースに泣かせる音楽を作れる希有な人だったのですね。

制作には5年を要したようで、インタビュイーの中でももう亡くなっている方もちらほらいたり、( ベルナルド・ベルトルッチ、ジーノ・パオリ など)何より2020年にエンニオモリコーネ は死去。

絶妙のタイミングでこの映画を作ったのも、トルナトーレの運命でしょう。

モリコーネ の死去について、全く映画内で触れないのも気に入りました。

モリコーネの曲と、その映画を知っている人はボロ泣きすると思います。
そうでない人も、この映画内に溢れる映画愛に包まれて幸せな気持ちになるでしょう。
それは「ニューシネマパラダイス」を観た後の感覚と似ていると思います。
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