MorrisWood

オペレーション・ミンスミート ーナチを欺いた死体-のMorrisWoodのレビュー・感想・評価

2.6
映画鑑賞後、モヤモヤする部分が多く、原作「ナチを欺いた死体 英国の奇策・ミンスミート作戦の真実」を読んだ上でのレビュー

特に気になったのは、本作はサスペンス映画を期待して鑑賞する方が多いと思うのだが、結構な尺をモンタギュー(主人公)と、パム(部下の女性)の中途半端なロマンスとそれに対する男性同僚・チャムリーの嫉妬に割かれており、肝心のサスペンス部分を薄っぺらにしてしまっている点。

登場人物に人間味を持たせるために本筋と関係ないエピソードを入れること自体は否定しない(それが成功している作品もある)が、このモンタギューとパム関連のエピソードから、観賞する側が登場人物たちに共感を覚えたり、登場人物たちの人物像に深みを与えることは一切なく、「何でこんなものを見せられないといけないんだ…」と鑑賞中退屈に感じてしまった。

なお、原作で後ほど確認すると、劇中のロマンス関係のエピソードはほぼ創作であり、原作を読んで「架空のエピソードのためにあんな無駄な尺を…」と2度ガックリしたことを付記しておく。

また、実際の作戦時にあたっては架空の人物が実際に存在していたように見せかけるため、実際の主人公達は偏執的ともいえるくらいの様々な欺瞞を行い、また、死体が漂着してからも色々な駆け引きがなされていたのだが、このあたりがかなり単純化されたり、そもそも描写すらされておらず、観賞中もほとんど緊張感がないと言って良い状態であった。

映画の総評としては「奇抜な軍事作戦の準備・実行・その後の駆け引き」という本来集中すべき部分に軸足が置かれていなかったのが非常に残念。

ただし、原作である「ナチを欺いた死体 英国の奇策・ミンスミート作戦の真実」は「ミンスミート作戦」に興味を持たれた方には非常におすすめの良書であり、映画の公開により本書の文庫版が出たことが本作の最大の評価点と言える。
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