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映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズのYAEPINのレビュー・感想・評価

3.5
クレヨンで描いたような揺らめく線画の背景を大画面で観るのは新鮮だった。

テレビアニメのストーリーの再構築らしいとは耳にしていたので、ガッカリまでは無かったが、確かに全く新しいストーリーを観てみたかった気はする。

本作は、テレビアニメ『オッド・タクシー』で起こった事件の関係者が、謎の調査員に対して当時自分が見たもの、感じたことを語り継いでいく構成で、時系列的には11話と12話の間くらいかと思う。

関係者の回想シーンという体で、テレビアニメの映像がダイジェストで紡がれてゆくが、私はテレビアニメを1回通しで見ただけで細かい部分は忘れていたし、複雑な群像劇なので繰り返しもあまり気にならなかった。

調査員に語るドブの「人の数だけ真実はある。それぞれ人が自分の都合いいように解釈して話すだけだ」というようなセリフが印象的だったが、本作はまさに、その解釈の微妙な差異とそれによるすれ違いを楽しむ作品だったと思う。

ある人にとっては些細な突発的な出来事でも、ある人にとっては人生の価値観、目標、生きがい全てを揺るがす出来事で、それの余波で他の誰かの人生まで揺れていく。

似たような立場にいても、全く同じ思考は他人と共有出来ないので、その細かいずれによって内部から崩壊することもある。
そう思うと、何万人もの地域も離れた人達を同じ方向に動かす経営者や組織のボスは、どこか人間離れしているのも頷ける。

テレビアニメと大筋が変わらないので、総評みたいなないようになってしまったが、映画でこそのシークエンスといえば、一応の大団円を迎えて安心したのと、ミキの亜生演じる大門弟の葛藤がかなり切実なものだったことが示された点だ。
それまで兄を正義と疑わずに慢心していた無垢な男が、その基盤が根底から揺らいだときに社会からも離脱しそうになるが、それでも取捨選択の上で自分の道を進もうとする姿が良かった。
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