ベイビー

神々の山嶺のベイビーのレビュー・感想・評価

神々の山嶺(2021年製作の映画)
3.9
マロリーはエベレスト初登頂に成功していたのか?

エベレスト登頂の歴史を覆す証拠となり得るマロリーの遺品のカメラ。カメラマンの深町誠はそのフィルムを求めるため、行方不明になった伝説のクライマー羽生丈二を探そうとします…

日本の原作をフランスでアニメ映画化。そのアニメーションのクオリティが実に素晴らしいです。画角の美しさはもちろん、正確な登山描写や70年〜80年代の東京の街並みまで、事細かなところまで丁寧に描かれています。

このクオリティは原作と日本のアニメーションへの敬意なんでしょうね。

作品の原作は夢枕獏さんの小説を「孤独のグルメ」で知られる谷口ジローさんが漫画化。谷口ジローさんは2011年にフランス政府から芸術文化勲章シュヴァリエ章を授与されており、もともとこの漫画もフランスでは絶大な人気を誇っていたため同国で長編アニメ化が実現。構想から完成まで7年の歳月を費やしましたが、谷口ジローさんはその間二度製作現場に訪れ作画やストーリーの確認に携わっていたとのこと。

残念ながら谷口ジローさんは2017年にお亡くなりになり、本作の完成を見届けることは叶いませんでしたが、作品は第74回カンヌ国際映画祭でプレミア上映され、本国では大ヒットとなり、フランスのアカデミー賞にあたるセザール賞で長編アニメーション映画賞を受賞されたそうです。

少し話が横道に逸れてしまいましたが、こうして作品が完成されて行くまでの経緯に触れるうちに、この作品に対する人々の想いと、この物語で描かれているクライマーたちの本質的な感情が、見事に重なって行くのが分かります。

人は何故山に登るのか…

その答えを探すため、人はまた山に登る

これは山に取り憑かれた男たちの話。家で映画ばかり観ている僕には触れることのない世界観。僕なんかはエベレストのベースキャンプどころか山の麓にも辿り着けないんだろうな。

アニメは日本のお家芸と思っていましたが、お株を奪われるほど見事な作品。アニメーションの技術もさることながら、ストーリー構成が良くグイグイと物語に引き込まれ、とても素晴らしい作品でした。
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