叫び

神々の山嶺の叫びのレビュー・感想・評価

神々の山嶺(2021年製作の映画)
4.7
海外で製作されたアニメーション映画って、なんか感性が違うのか、ファン熱が高い作品ほど受け入れがたいものが多かった。映像のシンプルさもそうだけど、商業優先の安っぽい大衆向けのまとめられた作りが嫌いでした。いわゆる原作厨ってタイプです自分。
この映画は凄い。日本のお家芸だった筈のアニメーションでフランスに遥か上をいかれている感じがしました。
神々の山嶺は、夢枕獏氏による、実在の人物をモチーフにした傑作小説で、大好きな小説なんですが、過去に漫画化、実写映画化もされていて、登山好きな自分にとっては大切な物語のひとつです。
谷口ジローの漫画も傑作だった。原作に忠実ながらも、人物や食事、装備などの描写が丁寧でリアルよりもリアリティがあった。
日本で製作された実写映画は正直、微妙だった。原作再現と、空撮自慢と阿部寛のアレに笑ってしまったけど、映画になったことが嬉しかった。今回のアニメはなんとフランス製作。ストーリーはかなり違います。まるで別の方向性です。だが侮るなかれ、正直、この原作を90分の映画にまとめるなんて、無理だろ?と思っていたが、この映画はそんな甘いモノじゃなかった。
序盤、原作を知っているから物足りなさを感じていたけど、日本のアニメーションが目指すモノとは明らかに異質な方向性だった。背景の緻密さ、カットの絵画的な美しさ。音楽の壮大さ、人物の描写。大自然をあえてアニメーションで描く難しさ。リアルだから美しい、って価値観じゃない。この映画だけでも満足感はかなり高い。原作に忠実なコスプレ映画ばかりの邦画界隈に、是非観て欲しい映画。なんというか新約的な立ち位置で、原作との相違点も凄く自然に受け入れられた。
名作映画の条件は90分で終わらせること、というが90分で原作をまとめようとする日本と、90分の映画を作っているフランス映画。どちらが名作になりえるんでしょう。
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