そらになるらむ

神々の山嶺のそらになるらむのレビュー・感想・評価

神々の山嶺(2021年製作の映画)
3.5
「お前はなんで俺を追ってきた?」

原作小説好きの私にとって、実写版邦画(2016)は少々残念な出来だった。
評判の良いこのアニメ版フランス映画はどうか?

驚くべきことに、登攀シーンの緊張感は実写版を凌駕する。こんなにシンプルな絵なのに! 物語の展開も、原作にかなり忠実で丁寧。好感を持てる。

ただ、圧倒的に描き足りないものがある。それは、一歩一歩、重い足を振り上げて、いままさに頂に辿り着こうとするときの高揚感(山登りする人ならきっとわかる)

原作小説の、平仮名だらけのノートに遺された羽生の最期の言葉こそ、まさに頂上間際の気持ちの高ぶりの表出であって、それがなんとも痺れるのだ。

この物語に限っては、残念ながら、原作が引き出してくれた僕の脳内映像に、映画は永遠に勝てないだろう。

「お前を突き動かしたものが、俺を登らせた」