ShinMakita

アンネ・フランクと旅する日記のShinMakitaのレビュー・感想・評価

1.9
オランダ…ある嵐の夜、「アンネ・フランクの家」に保管されていた日記から、1人の少女が飛び出した。名はキティ。アンネの話し相手だったイマジナリーフレンドだ。かつてアンネが暮らしたこの建物が博物館となっていることに驚くキティ。もちろんアンネの姿は無く、マルゴーもパパもママも居ないようだ。彼女たちは、いったいどこに消えたのか?アンネに会いたい一心のキティは、日記を手にアムステルダムの街へと飛び出していく。


「アンネ・フランクと旅する日記」


以下、アンネタバレ橋・アンネタバレ学校・アンネタバレ劇場…


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1942年から2年もの間ナチス占領下のオランダで隠れ家生活を送ることになったアンネ。彼女の日記は、想像上の友人キティに宛てたものでした。そのキティが現代に実体化して…というアニメーション。もちろんキティは、オランダがナチスという悪魔に蹂躙されユダヤ人が迫害されていたことは知っているものの、SSに捕まり隠れ家を後にしたアンネ一家がどうなったかは知る由もありません。その上、「現代」が1944年からどれだけ経過しているのかも解らないので、とにかく外に出てアンネを探そう、となるわけですね。その冒険の過程で、「アンネの日記」の凄さというか、オランダがいかにアンネ・フランクを英雄視しているかを知って面食らうわけです。アンネの名を冠した橋や劇場などがやたら建てられてるし。

…しかし、どこにもアンネの姿はない。

これが、本作のテーマ。つまり、現代の人たちはアンネの日記に書かれたことは知っているし、その内容に感動して、アンネを崇拝・尊敬はしているけど、アンネはいない…すなわち、日記の意義とアンネのイズムは継承されていないのではなかろうか?という疑問をぶつけてきたのが本作の特徴です。なんで今更「アンネの日記」をやるの?と思った俺に、終盤の展開は結構ガツンとくる衝撃でした。なるほど、今現在だからこそ、語るべき話だったのだなと。「アンネ・フランクは何処」という原題に呼応する「私はここ」という文字と日記カバー柄の飛行船。ちょっと落涙しちまいました。

キティの旅を通してアンネ・フランクの隠れ家生活の詳細やその最期まで全て見せようとしているのはちょっと欲張り。キティ実体化…でもアンネの家にいる時は不可視化するという設定もややこしい。観ていてなんとなく疲れてしまうんだが、いまアンネ・フランクを語り直す意味がしっかりあったということで高評価できる作品です。アニメのタッチには好み分かれそうだけど。あと、せっかく春休みシーズンに公開して文科省選定映画になってるのに、吹替版が無いっておかしくないか?
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