Kamiyo

評決のKamiyoのレビュー・感想・評価

評決(1982年製作の映画)
4.0
社会派の巨匠、シドニー・ルメットが出世作「十二人の怒れる男」以来挑んだ法廷もの 『評 決』。
弁護士フランク(ポール.ニューマン)が演じるのは、彼のそれまでのイメージを覆すような落ちぶれた酔いどれ弁護士。
新聞の死亡欄の切り抜きを持ち歩き、悲しみにくれる遺族にまとわりつくダニのような人間。
酒臭い息を隠すために口臭避けのスプレーをし、その髪は寝ぐせがひどくとても普段はダンディなポール.ニューマンとはかけ離れている役柄。

彼の数少ない友人弁護士ミッキー(ジャック.ウオーデン)が簡単な示談で大金が転がり込む、おいしい事件を回してくれる。
麻酔医のミスにより4年前に植物人間となってしまった一人の女性のケースだ。
当初はつつがなく示談金をいただくつもりの フランク
医療機器のチューブが沢山繋がれベッドに横たわり微動だにしない患者。
証拠写真のポラロイドのシャッターを切りながら、次第に苦悶の表情へ変わる・・・
そこに重なる機械の人工呼吸の音。
そしてゆっくりと浮かび上がる写真の中の痛々しい患者の姿・・・

名場面に大層な音楽も、仰々しい演技もありません。

そこには、正義を信じ、正義に裏切られ、正義感故に身を滅ぼされ、正義を諦めた男が、もう一度正義を取り戻してゆく
示談を取り止め、法廷で争う事を決断した瞬間です。
「正義」の為に。

真実さえも言いくるめられてしまう裁判ってなんなんだろう…?
落ちぶれた弁護士が、正義を貫こうとしていて、行く手を阻まれている。ぶざまで、見ているほうも苦しくなって…。
最後には、真実さえも言いくるめられそうになり、

元看護師の、証言の “ 真実 ” は、たとえそれが全部抹消になっても、陪審員の耳と心に残り、形だけの “ 真実 ” を覆す力を持つ

ラストに フランクが
陪審団に向かって話した言葉「今日の正義は法廷でも弁護士でもない。あなたたちです。」

ポール・ニューマンが逝ってもう11年以上が経ってしまいました。
反骨精神の塊、決して諦めない男、そんなイメージが常につきまとう名優中の名優です。
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