【歴史と歴史の皮肉と民主主義】
この映画のタイトルがなぜわざわざ”Mr.(ミスター)”から始まるのか、冒頭のゴルバチョフの発言で理解することが出来た。
旧ソ連共産主義政権下では、同士〇〇と呼び合うのが普通だったのだ。
同士と呼び合うわりに階級ギャップはキツかったように思うのにだ。
所詮組織とは階級闘争の場となるのだし、上辺だけで同士だったのだ。
この長い長い映画は、ロシアがウクライナに侵攻し戦争を続けている今だからこそ観て欲しい作品だと思う。
歴史は皮肉だ。
冷戦を終結させたとしてノーベル平和賞を受賞したゴルバチョフがバルト三国の独立に反対し、軍隊も送り、独立を後押ししたエリツィンは実は汚職にまみれ、それを裏で揉み消した側近のプーチンが後にロシアの大統領として君臨し、ウクライナに侵攻しているのだ。
日本の外交は、いつからかアメリカ一辺倒になり、ヨーロッパ研究がおろそかになってしまった。
2022年12月30日、このレビューを書いている時に、NHKの「映像の世紀・バタフライエフェクト」で、「ロックが壊した冷戦の壁」を放送していた。
日本人は観光でヨーロッパを目指す人は多いように思うが、彼らがどのように民主主義を勝ち取り、二度の世界大戦を経て、どのように戦争の2度とない世界を希求し、EUなどの仕組みを構築してきたのか、それにはどのような人たちが関わってきたのか、それは、冷戦後のヨーロッパにどのような影響を与えたのか、プーチンは西側の価値観を押し付けるなと言うが、専制主義者が恐れるものは本当は何なのか、そんなことも考えながら観たらどうかと思う作品だ。
民主主義は、その原則ゆえ揺れ動く社会システムだ。
しかし、民主主義自体に復元力は必ずあると僕は信じている。