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バビ・ヤールのYのレビュー・感想・評価

バビ・ヤール(2021年製作の映画)
4.0
自分には、とても消化しきれない重さを突きつけられて放心状態のため、まだ混乱してるけど心に隙間を作るために気になったシーンと感想をまとめておきます。
※ネタバレ(というのか分からないけど)します※


ロズニツァ作品は前回公開の『ドンバス』しか観たことがなかったので、その時その場所で撮られた映像を彼が選んで並べたアーカイブのドキュメンタリー形式にまず驚かされる。
なぜその映像なのか、なぜこの順番なのか、そこに監督の意図はもちろんあるはずだけど、なるべく中立に中立に傾かないように意識してまとめているような印象を受ける。

バビ•ヤール渓谷でのユダヤ人虐殺についての映画だと思って観ているものの、それについて触れているのは全体のほんの一部に過ぎず、これだけ衝撃的な罪が大戦の中では一部であるということに更なる絶望を感じる。

ロシア帝国からソ連になる間にウクライナは一時独立をしていた歴史を経て、ソ連下になり大飢饉やホロドモールも経験している。そんな苦しみを経た後のキーフやリヴィウを中心とした第二次世界大戦中の記録。
ナチスに占領された時、街の人々が歓声をあげ、ヒトラーのポスターを貼り、ナチスの旗を掲げ、ナチスの人々に花束を渡すシーン。ありがとうと言うドイツ兵。もう戦争は終わりだとウクライナ兵の男性たちを家に帰し、幸せそうな家族たち。
まずナチスがこれだけ歓迎された事実は映画などで観たことがなかったので驚かされた。

その後ソ連が奪還しソ連軍が入城する時、あまりに閑散とした通りの映像が対照的で、とてもショックだった。これらすべてが1941-43年の2年ちょっとのできごとだったことも俄かに信じがたい。

おそらく出頭要請を受けたユダヤ人の人々と思われる列、不安や恐怖というより、これから待ち受ける未来を予想していないとも読み取れる人々や子供達の目は脳裏に焼き付いて離れない。

戦後の裁判の際の映像で、バビヤールではユダヤ人だけでなくその場にいたウクライナ人の人々も目撃者として犠牲になったのだと知る。
この映画で取り上げられた第二次世界大戦中の映像からだけでもウクライナという国が大国の間に挟まれる翻弄されてきた軌跡が苦しいほどわかる。

きっと観る人によってどこを観るか、どう感じるかは大きく異なるんだろうと思う。
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