家出した女の物語、のようである・・・なにやら大きな苦しみを胸に抱え、やむにやまれぬ思いで家を飛び出すヒロインと残された家族の物語を眺めているうちに、何か感じる違和感が、やがて最後にアッと驚くラストに帰結する・・・
という謳い文句通りの作品なのだが、何となく途中で落ちが予想できてしまう。
決して、張り巡らされた伏線がラストで見事に回収され、パズルが見事に組みあがるカタルシスに震えるタイプの映画では無い。
もっと浸るタイプのゆるい作りの作品で、映像作品として見事に具現化された美しい(美しくあらねばならない)光景の中で、押し殺したかのようなヒロインの苦しみに寄り添いながら、作品の世界に浸る構造になっている。
良質な映像空間に浸って、寄り添えれば、感動もあるかと思う・・・。
柔らかな光、豊かで鮮やかだけれど落ち着いた色彩、舞台となる家から何気ない服装や生活の小道具に至るまで、まるで絵の様な美しさ。使われる音楽やフォントもお洒落。俳優たちの演技も演出も良い。
物語を彩るバイプレイヤーであるビンテージカーの1979年型AMCペーサーも、エンドロールで「La voiture : AMC Pacer '79」とキャストの最後にクレジットする遊び心も素敵。
なのに点数が低めなのは、純粋に好みの問題。
このヒロイン・・・自分の不安定な気持ちを処理できなくて、周りに迷惑をかけるタイプの女性で、まったく寄り添えなかったんだな。
スペイン映画の『おもかげ』のヒロインも、こんな感じのタイプだったよなぁ・・・(あそこまで酷くないけど)。
ラストに至っても・・・知らんがな、そういう事をちゃんと処理してこその大人だろ?・・・としか思えなかったので、点数は低め。
弱い女は嫌いなんだよ。