ユウサク

彼女のいない部屋のユウサクのレビュー・感想・評価

彼女のいない部屋(2021年製作の映画)
4.7
マチュー・アマルリックが監督したやつ。凄まじかった。あらすじとかあるのかな?あるのなら確認せずにいきなり見た方がいい。

人間の記憶って全然時系列じゃないし過去も未来もごっちゃになって、そこに「こうであってほしかった」「自分はその場にいなかったけどこんなことがあったんじゃないか」「自分が今やってることは誰かへの応答なのではないか」みたいな想像が無作為に絡み合ってると思う。それを完全に再現したような映画。音声の混線、視座のスイッチング、空間そのものに宿る意味、すべて自分の知ってる映画の文法ではなかった。ただ単に家族を失った人間の話と捉えていいんだろうか。いや単にそういうものだったとしても、「一人残された男」の話は数あれど「一人残された女」の話はまだ少ないはずで、そういう重要さはある。そのうえで、もっと次元の違うものを見た気がする。ピアノの「ラ」の音が頭にこびりついて離れない。今まさに断片を拾い集めて都合よく色づけて再構築しているようで混乱する。その都合よさを寿ぎたい。

一点だけ、ラストカットは窓越しの車がフレームアウトの方が良かった……。これがDVDしか出てないの、あり得ない!
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