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劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室のcalinkolincaのレビュー・感想・評価

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「劇場版 TOKYO MER~走る緊急救命室~」最高だった。
このドラマの、そしてキャラクターたちの最高なところだけを抽出した劇場版。ドラマの劇場版ブームで数多のドラマが映画化されているけれど、やはりこのドラマが劇場版が作られるべきドラマの最高峰だった。
映画にはざっくりわけてエンタメ系とアート系があると思っているけれど、これはエンタメ系映画の最高傑作。
ドキドキとハラハラが詰まったオープニングから期待は最高潮。

物語にはランドマークタワー火災という縦軸に、横軸の3つのテーマが散りばめてある。
「TOKYO MERとそれに対立するYOKOHAMA MER」。
「研修医の潮見先生の成長」。
「喜多見先生と高輪先生、そしてそのふたりの子供の出産」。

TOKYO MERの秀逸なところはその、深いところまで掘り下げられた人物設計と緻密な脚本。
今回の映画版では最愛の妹、涼香を失った喜多見先生とやはり涼香という最愛のひとを失った音羽先生のその後が描かれるのだが、涼香と同じくまた最愛の人を失うのかと思われた喜多見が一歩踏み出し、もう同じ轍は踏まないと成長した姿、そしてクールに見える音羽先生が涼香を失くしたあのたったひとりの死と同じ想いは誰にもさせないと、胸の中に煮えたぎる「生」への、そして涼香への秘めた想いを垣間見せるシーンに涙が止まらなかった。
脚本の黒岩さんが「たったひとりの死の重み」を感じてほしくてこの世を去った、みんなに愛された涼香ちゃんというキャラクター。この劇場版の中にも確かに涼香ちゃんはいたし、彼女の死は決して無駄ではなく、多くのことをもたらしてくれていた。そのことがたまらなく嬉しかった。

〜以下、ネタバレあり〜

死さえも恐れず火の中へ飛び込んでゆくMERメンバーに恐れおののいていた研修医の潮見先生が彼らの姿を目の当たりにして自らも火の中へ飛び込んで皆を助けに向かうところ、音羽先生が彼女の死を語ることでYOKOHAMA MERがTOKYO MERと団結するところなどははっきり言って先が読めるしお約束なのだが、感情表現が緻密でキャラクターの気持ちが手にとるようにわかるため、場面がスローモーションになり、いざ、潮見先生が燃え盛る炎の中に現れると、心のなかで「おお!」と叫び、拍手してしまう自分がいた。
ちなみに私の推しでもあるSixTONESのメンバー、ジェシーは最初はオドオドしていた潮見先生の心の成長を見事に表現しており、ファンとしてもとても嬉しかった。

喜多見先生にとっても肉親の死は新たな肉親の誕生でしか乗り越えられなかったと思うので、安堵とともにスクリーンを見送ることができて本当に良かった。
もう、超満足。
そして、現実の医療従事者へのリスペクトも忘れないこのドラマのスタッフの姿勢にもリスペクトを。
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