"才能は…ないかなぁ…だけど、なんだろ?人間としてのね、器量があんだよ…"
小河ケイコ…プロボクサー…聴覚障害者…
老舗の小さなボクシングジムで、トレーニングに励む日々…試合後の"もういいんじゃないの?"とボクシングを辞めるようにと諭す母の言葉が何故か心に響く…何とも表現出来ない気持ちが心に溜まり、何となくボクシングから足が遠のく…
そんな時、会長がジムを辞める決断を下した…
"ケイコ、ごめんな…"
16ミリフィルムの淡い色調で描かれる両耳が聴こえないプロボクサーの単調な日々、そして何とも表現出来ない鬱積した気持ちを鮮やかに表現する岸井ゆきのの目の演技…
主人公が聴覚障害者だからという訳ではないのですが、淡々と進むストーリーの中、縄跳びやミット打ちのリズム、街の音、川のせせらぎetc…実に鮮やかに"音"を魅せる作品でありました。
三浦友和演じる会長の飄々としながらも、実に暖かい目線で主人公を見守る姿に何故かジワリとくるものがありまして…
自分の予想以上に刺さる作品でありました。
まるでダンスをしているかのような素晴らしいミット打ち…このままプロボクサーとしてやれるのではないかとの思いを抱かせる説得力、更に聴覚障害者という役柄なのですから…岸井ゆきのの存在感が今作の全てなのかもしれません…
三浦友和を始め、魅力的な俳優陣が脇を固める中、何だか凄く久しぶりの仙道敦子の演技も印象深いです。
余り派手さはありませんが、しっかり地に足つけた秀作です…でも…劇中から流れる色んな音に混じって、ぐーすかぴーな音もちらほら…あぁ…