湯っ子

ケイコ 目を澄ませての湯っ子のレビュー・感想・評価

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)
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丁寧に重ねられたエピソードには説明はいっさいなくて、だけどどんなセリフよりもケイコのまなざしや小さな「はい」が何よりも雄弁で。映画というのは映像で語るもんだというのを強く感じさせてくれた。岸井ゆきのがほんっとにいい表情する、なんだこのカオは、と思っていたら終わってしまった。悲劇もなくそうドラマチックでもない、なのにこんなに心を打つ、ケイコがミットに打ち込んだ拳のように、私の心にもまっすぐ打ち込まれた。すごく良かった。でも採点は難しい。理由はこの後書きます。

(映画と関係ない話)
評判が良いからか、平日昼間にしてはお客さんがけっこう入っていた。隣の席の男の人が、ときおり「ウーッ!」と唸って顔の前で虫をはらうようなしぐさをする。私なんかニオう?(汗)と焦ったが、すぐに鎮まる。でも、ちょっと離れたところで席を立つ人や咳をする人がいたりすると、そちらを振り返って唸る。怖いなぁ、やだなぁ、席移ろうかな、と、映画に感じ入りつつ頭のどこかで考えていた。
映画が終わって、あんな人の隣でツイいてなかったなぁと思いつつ、唸るってことは苦しんでるってことで、あの男の人はなんらかの苦しみを抱えてる人で、そんな人がこの映画をお金払って観に来ようと思ったのかなと思ったら、ちょっと嫌な気持ちが和らいだ(ように思い込んだ)。きっとこれからもこの映画のことは、あの男の人とセットで思い出すと思う。
湯っ子

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