「目を澄ませる」って"じっと見つめる"という意味なんですね。
本作は主人公ケイコ(岸井ゆきの)が自身の心情を見つめ、観客も一緒になってじっと見つめる映画だと感じました。
原案は聴覚障碍ながらプロボクサーである小笠原恵子という方がモデルらしい。ただでさえ殴り合いという危ない場所なのに、ゴングの音やセコンドの声が聞こえない中で闘うなんて、ちょっと想像ができない。
そんな難しい役を岸井ゆきのは見事に演じている。序盤のボクシングジムで見せる背中の筋肉や目つきはボクサーそのものでした。
そして特徴的なのが音。オープニングのケイコが文字を書く音やミットを叩く音、雑踏の音など、聞こえないケイコと対比するようにこれでもかと聞かせてくる。
また16mmフィルムで撮られた映像が良い。現代なのに一昔前のようで、閉鎖されるジムと相まって一瞬一瞬きらめきを放ちながら、哀愁を感じさせてくれる。
ケイコは淡々とボクシングを続けていく。人間くさくも迷いながらも鍛錬を積み重ねていくことの尊さといとおしさを見せてくれる。素晴らしい作品でした。
と書きつつ、平坦なストーリーに不覚にも少し眠くなってしまったのは秘密です😪