ゆきゆき

ケイコ 目を澄ませてのゆきゆきのレビュー・感想・評価

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)
3.8
物語は主人公のケイコがすでにプロボクサーになり、初試合で勝利を収めたところから始まる。つまり、ろう者の女性ボクサーのサクセスストーリーなどではないのですね。

2020年とわざわざテロップがつけられている通り、コロナ禍というのがはっきり描かれているのも特徴。マスクで他人の口が見えなくなったことから読唇が大変になったという部分もありながら、余計なコミュニケーションが減って生活がし易くなった部分もあるなど、ろう者のコロナ禍の現状をさりげなく描いてるのが良かった。

ジムの人たちに自身の心の葛藤を伝えられず(それはケイコがろう者であるとは関係なしに)、周りと軋轢を生んでしまう中で、彼女の心を変える登場人物のある行動。それは言葉だけではなく、感情と行動によって人は繋がっているというのを現わした好きなシーンです。

1人の女性の内なる葛藤と周囲の人々との交流を描いた、普遍的な物語性を持つ素敵な映画でした。
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