たむらもとこ

ケイコ 目を澄ませてのたむらもとこのレビュー・感想・評価

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)
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映画館で観てよかった

多くを語らない
結論づけない

事実だけがあって

それがとてもいい

だけど
その事実を取り囲むように
それぞれの思いがあって

思いがあるからこそ
重なったり
絡まったり
すれ違ったり

人の数ほど人生がある
なんてことは言い尽くされているけれど

わたしの中に
まだステレオタイプな考えがあることに
気付かされハッとする

そうだよね
一つの出来事に対しての思いだって
人の数だけあるのだ
何を選択するのかも
人の数だけある
それがいいとか悪いとかじゃない
普通はどうとか
そういうことじゃない

みんな一生懸命生きてるのだ

あるがままでいいのだと
そんな風に言ってもらった気がする

兄弟喧嘩もなんだか懐かしく
喧嘩も立派なコミュニケーションだよなと
喧嘩できる相手がいるのも
幸せなことかもしれないなと
そんなことを思ったりもした



人との出会いはもちろん
映画との出会いも
本当にご縁だよなぁと思う

若い頃、ほんの一時期だけれど
毎日ボクシングジムに通ったことがある

ボクシングを観るのは好きだったけど
自分でやろうと思ったのは
当時辛いことがあったから

忘れるために
ひとりで生きていくために
女だからと馬鹿にされたり
傷ついたりしないために
強くなりたいと思った

ダイエット目的のボクササイズではなく
かと言って誰かと戦いたいからでも
誰かを殴りたいからでもない
自分と向き合うためのものだったけど
わたしなりに本気で取り組んでいた
心身強くなりたかった

当時
角海老宝石ジムは本気の男性ばかりで
女性のための更衣室もシャワーもなかった
だから邪魔にならない昼間だったら
無料でいいと言われ
毎日12時から通った
毎朝近所の公園まで走ってシャドーした
夜はどれだけビールを飲んでも酔わなかった
自分の体がどんどん変わっていくのが楽しかった

映画を観終わってから
もう蓋をして遠くにしまっていた
そんな昔のことを思い出した

必死で生きてきた自分にも
頑張ったねって
お疲れ様って
言ってあげたくなった

この映画を
映画館で観られてよかった
映画っていいね
映画館っていいね
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