日経と読売の評価が高かったので観てみたら、期待以上に良かった。主人公は聴覚障碍者だが、この映画にはいろいろな音があって、抑え気味で淡い映像に凄く効果的に思える。ミットやサンドバッグを叩く音はボクシングのストイックな規律を、鉄橋を通過する電車の軋む音は下町で生き抜く生命感を伝えてくる。ケイコには聞こえない音だが、目を澄ませて感じとっていて、彼女の原動力になっているような気すらする。ケイコの揺れる心、心の変化、そして決意を表情、特に目付きだけで演じ切った岸井ゆきのは本当に凄い。また三浦友和は「線は、僕を描く」に続くはまり役だったと思う。そして弟役の佐藤緋美の自然体の演技も良かった。今年最初に観た映画が本作品で良かったとしみじみと思う。
