いとおしい映画。そして岸井ゆきのの演技力、なんせ設定上、主人公のセリフがない。それでこの演技。
ボクシング映画は出世作で、安藤サクラも『百円の恋』でブレイクしたし、菅田将暉『ああ 荒野』や北村匠海『アンダードッグ』、窪田正孝『初恋』もそうだ。特に窪田は『春に散る』『ある男』も迫真の動きを見せてくれる。
岸井は、コンビネーションのシーンでは、本当に「その場で」新しい動きを練習したのだという。そのあたりも、説得力がある。
ジムの会長を演じる三浦友和も、『台風クラブ』以来のフワフワした雰囲気で、それでも師弟のいい関係を感じさせる。
川や河原(ほんとうに絵になる)や、その風景や、電車の光など、叙情的な映像もすばらしい。
監督やスタッフ、役者たちなどが懸命に取り組んだ名作だ。