表情がリアル。
同居している弟から
「皆姉ちゃんみたいに強くないんだよ」
と言われる場面が、一緒に住んでいる1番近い存在である家族ですら、恵子の気持ちは全く理解できていないんだと分かり、
恵子は軽い絶望を覚え続けながら生きているのではないかなと思う。
警察官が一方的に顔にライトを当て、強引に話し出し、聴覚が機能していない事を知らせるカードを見せるも自分勝手に眺め回し、書いてコミュニケーションを取るでもなく、謝るでもなく、勝手に無視して去っていく様がとても強烈。
この様な事が日常なのだとしたら、何も考えずにひたすら動いていたいと思う事があるのは当然ではないかな。
聞こえない事に気づかれずに悪意を向けられ、勝手に話しかけておきながら無視して去っていく人を常に身近に感じていたら、人は一人だと思っても当然。
弟が、「皆は姉ちゃんと違うんだよ」とまた恵子を傷つける。
恵子は自ら一人を選んでいるわけではない事に誰も気づかない。
それでも最大の理解者であるジムの会長とトレーナーという存在だとがいて、恵子がなぜかものすごく励むので周りがサポートしてくれる様になる。
そういう背景を何も知らずに「このジムは女にばっか力入れるし」と人の気も知らずに鋭い言葉を吐き捨てて辞めていく青年がいて、恵子が1番それを気にしている。
伝えたい事が伝えられない悔しさが手に取るように伝わって来て、感情のコントロールの差で試合に負けたんだと思った。
すごくリアル。
対戦相手が一方的に挨拶に来て、相変わらず恵子の話は何も聞かずに一方的に去っていく。
果てしない戦いだと思う。
私たちがたまたま耳が聞こえて話せる事が普通というだけで、耳が聞こえないかもしれないなどと想像しない事がこんなにも人を傷つけているのだという事に気づいた。
耳が聞こえない人が大多数だったら、話しているのに無視される事の辛さが分かるんだろう。
恵子は文章はとても可愛らしいのに、常に怯えていてその可愛らしさが普段は閉じ込められてしまっている。
ホテルの先輩が親よりも親みたいで、また試合楽しみにしてる!っていってくれたり、弟の恋人のハナが手話を覚えて一緒にダンスをするようになったり、家族以外の人の方が恵子のことを理解している様に見える。
そして、そんな恵子への接し方を見て家族が少しづつ変わっていくのもすごく不思議。
配役もなんかよかった。