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ケイコ 目を澄ませてのyukoのレビュー・感想・評価

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)
4.6
ボクシングに夢中になって、そこからあの人たちがいるあの場所にたどり着いてそこにいることが大好きになった。表情はあまり変わらないけれど恵子の目からずっとそんな気持ちが溢れてるみたいで、それだけで涙がでる。自分も人も建物もガタがくるもので、いつまでも同じではいられなくて、そのときにしかない瞬間がだからすごく大切なものになるということの当たり前が言葉じゃなくスクリーンにずっとうつっていて、それを観てると実感として沸々とさせられてまた涙がでる。
おっきな鏡のまえで恵子と会長が一緒にゆっくりシャドウボクシングしているところ、あと昼下がりのジムに舞ってるきらきらしてる埃とか、何回も何回も言葉をやり取りしてきた、もう黒ずんでもきているホワイトボードに、いつまでもみていたくなるようなあたたかな気持ちが込み上げてしまって、やっぱり涙目で釘付けになっていました。(それを、どうしても劣化していってしまう16mmフィルムのやわらかい映像で今のこの瞬間にみれていることに嬉しくもなってくる。)
恵子の耳には入らない声はときどきとても殺伐としていたり冷たかったりする。それに私たちは麻痺してしまっているのかもと、監督に映画を介して言われているみたい。
リング上では自分と違って、めちゃくちゃ強くて逞しいと思っていた相手だって、自分と同じように痛みとか闘うことへのこわさをひとりのときに抱え込んでいることを恵子が気付いてからのこれから、で物語は終わる。
オープニングの音楽も、エンドロールの音楽も、劇中歌もなくて、音楽としてあるのは恵子の弟がそこで鳴らしているギターの音だけで、それがすごく良かったです。

(あとまったく別の「会長」っぷりを演じきる三浦友和はやっぱりすごい、あっちの会長も大好きだけど!)
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