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ケイコ 目を澄ませてのdiesixxのレビュー・感想・評価

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)
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コンビネーションミットの小気味良いリズム。音楽的とすら言えるボクシングジムの風景を音のない世界に生きる主人公を通して描くことで、逆説的に聴覚障害者へのエンパシーを喚起するつくりがありそうでなかった。
弟との手話での会話が無声映画風になったり、友達同士の会話は全く字幕をつけないことで観客を阻害したりと、手話言語の対話をさまざまな角度で表現している。
コンビニでポイントカード案内されてエコバッグ出したり、人にぶつかって罵られても全く伝わってなかったりと、体験者からリサーチしたであろう描写もリアルでよかった。
主人公のケイコを単にピュアな人間にせずに、つかみづらい人物にしてるところも良くて、せっかくみんなが見つけてくれたジムで、オーナーも頑張って手話覚えてくれてるのに、「家遠いから嫌です」ってみんなを失望させるシーンは「おいっ」って思って、でもちょっと笑っちゃった。
ラストの河川敷で対戦相手と会ってから、ケイコが吹っ切れたように走りだし、他の歩行者たちが画面を横切っていくラスト。みんな日常でそれぞれ戦ってる。痛いの逃げたり、ノックダウンされたりしながら、人生という名のリングに立ち続けてる。数えるのも忘れた第何ラウンド、あしたもやってやんよ🥊って気持ちになれるいい締めくくり。
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