りょう

ケイコ 目を澄ませてのりょうのレビュー・感想・評価

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)
4.0
ボクシングものに外れなしと言いますが、この作品もまた当たりでした。

ケイコはなんでボクシング始めたんだろう。ケイコの性格的に無骨な感じだし、チームスポーツじゃなくて、しかも殴ったり殴られたりの感覚が直接的で、やった分だけ実感が出るからなのかな。殴るの気持ちいいって言ってたしな。

会長の人柄が素晴らしい。この人についていきたいって思える人なんだろうな。掛ける言葉が厳しくてもこの人が言うならって思えてしまいそう。二人で鏡の前で練習するシーンよかったな。

ケイコと弟のやり取りもよかった。ケイコがイラついて悩んでる時もちゃんと聞いてあげようとする姿勢。なかなか姉弟じゃ出来なそうだけど優しい弟だ。弟の彼女とちょっと仲良くなるのもほっこり。

コンビニでポイントカードのことを聞いてくるお兄さん、ケイコと肩がぶつかってキレまくるおじさん、職務質問してくる警官。理解が少し進めばこんな悲しいコミュニケーション無くなるのに。一方理解しているジムの人たち。試合中の指示が聴こえなくてよく戦えるねと言う質問に、あらかじめ指示のサイン決めておけば、と答えるジムの人たち。理解と工夫で乗り越えられる、いや何とも思わなくなる状態にできる。

ゴングも何も聴こえないリングの上は孤独、倒すべきなのは相手と、自分自身に降り掛かる恐怖心。でもボクシングを通じてケイコの世界は広がる。会長やジムの人、手話を勉強してコミュニケーションを取ろうとしてくれる次のジムの会長や弟の彼女。仕事場のおばさんも次の試合を楽しみにしてくれている。

岸井ゆきの、恐るべし…。安藤サクラの「百円の恋」の時もそうだけど、まずボクシングやってる姿がサマになっているかどうかって相当な努力しているはずだし、セリフは「はい」のみなのに、ケイコの喜怒哀楽がよく表現されている。

音楽はほとんど無いけど、ジムでのミット打ちなど、音が強調されている。強調することで逆にこれが聴こえないケイコの世界を想像させられる作りになっていた。ろう者の作品ってかなりポピュラーになってきていますが、ここに来てまた違ったアプローチの作品で、見る価値があった。
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