Happa2001

ケイコ 目を澄ませてのHappa2001のレビュー・感想・評価

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)
4.0
映画を見る人のどれくらいがそれを知っているのかわからないが、映画を作りだすカメラというのは音を拾うことができない。僕は映画を撮ろうと思い始めて、大学の映画サークルの人たちがやっている撮影場所に訪れて改めて、初めてに近いようにそれに気がついたのだけど、大抵写らないところの後ろで大きな虫取り網のようなマイクを持っている人がいて、それが映画を作っている監督たちの求めている音を拾うことができる。つまりカメラ自身は自分が今撮っている風景の音を満足に聴くことができないでいるわけだ。
世界の中にあるものは全部、じっとしていたり、その動きが見ることができないほどすごく小さかったり大きかったりする(と思われている)ものも動いていて、カメラは大抵それを目の当たりにしながら、写真として収めなければならない。なぜならその動きは瞬く間になくなってしまう、気を抜いたら全く別の新しい動きがさっきそれがあった場所の近くに現れている。草は前後左右360度の自由な方向に揺れ続ける。光があるものにぶつかって灯りを与えたと思えば消えたり、そう思えばまた別のものに別の光がぶつかっている。とにかく一度として同じ動きを再演する能力を全ては持ち合わせておらず、現れてはいなくなっていく。カメラは、それの動きの生まれたりや、動いてる最中、そしていなくなるその瞬間をジイっと見つめながら写していく。特にこの映画は、いなくなってゆく途中のものを写そうとしているのだと思った。
動き続けている。私たちも、私やあなた以外のものも。動くことはそれをやらなければならないなどということを超えて平然とみんながやるように備わっている。みんな生み出すの動き、その動きに動かされて動いてゆくみんなは近くにあるもの同士でお互いにばちばちと当たっていったり、遠くにあるものに向けて当たってゆこうとしていく。その動きは、動くことは、続く。勝っても負けても続く。何かをやめてもまた始めてもそれは続く。生きても死んでもそれは続く。やめてはならない、やめることはできない。
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