いずみたつや

ケイコ 目を澄ませてのいずみたつやのレビュー・感想・評価

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)
4.5
同じような日々の小さな変化を描く繊細さ。セリフの量は少ないけれど、胸の内を駆け巡る複雑な思いを表現する演出と演技の豊かさは驚くべきものでした。言葉以外で雄弁に語るというのは聾唖のキャラクターを描く上ではもちろんのこと、映画としてもこの上なく素晴らしいことだと思います。

それぞれの小さな努力が緩やかに影響しあうのがとても心地よくてこの映画の好きなところです。16mmで撮られた映像の雰囲気もマッチしていて、フィルムの粒子がどこか寂しげで、同時に人肌の温もりを感じさせるような生の感覚も残してくれます。

勝った負けたで終わるのはフィクションですが、それでも人生はつづくことを描く姿勢も美しい。日々の小さな変化に一喜一憂しながら、今日も生きるのだ。