さいの

ケイコ 目を澄ませてのさいののネタバレレビュー・内容・結末

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

聴覚障害(とそれに付随する手話の必要性)という健常者との言葉の壁があってもなくても、人が何かを大切に思ったり、あるいは手放したくなったりする気持ちの理由は簡単には説明できない。他人にはなかなか伝わらないし、そもそも自分だって自分の気持ちを理解できていないから。乗りこえられない言葉の壁が「病気」としてデフォルトで設定されているケイコには尚のことだろう。
ケイコは自分の気持ちのその複雑さから逃げずに、常にそれに正直に向き合おうとした。だからその言動には一貫性がない。人間の心とは本来矛盾だらけで不可解なもので、二転三転しない確固たる決意なんてまやかしなのだと思わされた。
ラストシーンで胸を打たれてまた走りだすケイコは、また立ち止まってもいいし、そこからまた走りはじめてもいい。私にとっては、自分の心と不器用ながらも真摯に対話する彼女が美しい。
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