もりりた

ケイコ 目を澄ませてのもりりたのレビュー・感想・評価

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)
3.5
耳が聞こえないがプロボクサーとして試合に出る恵子。日々練習に取り組む真面目さの一方、心配する母や自身のボクシングに対する熱量を鑑みて心は揺れていた。ジムの存続危機も相まり恵子はある決断をする。

意図してか音楽はほぼ無く縄跳びやミット打ちの音がはっきり聞こえる演出。ある時は終わりが見えた寂しげなジムの雰囲気を強調し、別の場面では涙を隠すトレーナーに笑顔を見せ、練習を続ける恵子のボクシングを楽しむ気持ちが伝わってきた!ジム閉鎖の通達にも黙って練習に戻るジム生であったり、恵子の聾者としての足取りを何気なく写す脚色の無さがリアル。だからこそ弟の彼女が手話を覚えたり、会長の妻との心温まる交流がしっかり伝わってきたな!

ジムの状況と母の気持ち、友人との手話シーンから環境や将来に向けた生きがいの変化が伝わる一方で、長年続けたボクシングへの熱量が伝わる演出が印象的。会長の奥さんが日記を音読して伝える足跡と、ステップやコンビネーションが上達しスムーズにパンチが出る姿を並行する演出から真摯に向き合った過程が伝わってきた!ドライな性格の様で根底は熱く、試合で感情をグッと噛み殺す表情は無念さが溢れていて印象的でした。

ボクシング映画とは思えない静かで穏やかなシーンが続きテンションは低め、でも好きなことに熱中する大事さをしみじみと感じる映画でした!
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