ぶみ

君は放課後インソムニアのぶみのレビュー・感想・評価

君は放課後インソムニア(2023年製作の映画)
4.0
ひとりじゃない。
 〜Insomniacs after school〜

オジロマコトによる同名漫画を、森七菜、奥平大兼主演により映像化した青春ドラマ。
不眠症に悩む高校生二人が、学校で使われていない天文台で出会い、天文部を復活させようとする姿を描く。
原作となる漫画は未読であり、現在放送中のテレビアニメについても未見の状態で鑑賞。
主人公となる高校生・中見丸太を奥平、曲伊咲を森、天文部顧問を桜井ユキ、天文部OGを萩原みのり、伊咲の両親を斉藤陽一郎、MEGUMI、姉を工藤遥、丸太の父親を萩原聖人が演じているほか、田畑智子、でんでん、上村海成、安斉星来、永瀬莉子、川﨑帆々花等が登場。
物語は、不眠症(インソムニア)に悩む丸太と伊咲が、ひょんなことから学校の天文台で出会い、天文台を継続使用するため、天文部を復活させようと、周りの人々を巻き込みながら奮闘する姿が描かれるが、やはり特筆すべきは、森がハマり役であるということ。
前述のように、原作となる漫画やアニメを知らないため、その再現度は不明であるものの、まるで森のためにあてがきされたかのようなキャラクターであり、台詞回しといい、透明感といい、森の魅力を1000%引き出していると言っても過言ではない。
舞台は、原作の設定同様、石川県七尾市でロケされているらしく、高層ビルのない地方都市特有の空気が澄んだ雰囲気や、街中に川が流れ、少し離れれば緑豊かな景色が広がる様は、そこに住む人々の息遣いが聞こえてくるもの。
映像としても、灼熱地獄ではなく、初夏の爽やかな暑さに包まれており、それが青春時代の微妙な心の揺らぎと相まって、柔らかな雰囲気が常に漂っている。
また、工藤演じる伊咲の姉や、萩原演じる天文部OGが、要所要所で登場し、物語に動きをつけるアクセントになっているとともに、ワンシーンのみの登場ではあるものの、でんでんが若手中心のキャストのなか、ベテランとして脇を固めており、今や柄本明と並んで、邦画に欠かせない存在感を放っているのは流石の一言。
終盤は、重めの展開になってくるものの、全体的にはあっさり目の味付けであり、不眠症がほとんど物語に絡んでこなかったりと、原作を知らないが故の物足りなさを感じたのは否めないが、能登半島の柔らかな陽射しの下、魅力が爆発した森を筆頭とする若手キャストによる青春物語は、しっかりと観る側に淡く細かな心情を伝えてくるものであり、夜空や水面の美しさとともに、心地良さしか残らない良作。

それが今、居場所を守る武器になってる。
ぶみ

ぶみ