じゅ

N号棟のじゅのネタバレレビュー・内容・結末

N号棟(2021年製作の映画)
3.1

このレビューはネタバレを含みます

うわあ。嫌〜な。


大学の卒業制作で、幽霊が出るとの噂が立っていた団地を訪れた3人の大学生、啓太、真帆、史織。廃墟であるとの情報だったが、「立入禁止」の看板がぶら下がったゲートを抜けるとそこには管理人がおり、人が住んでいた。部外者に敵意を向ける管理人だったが、入居希望だと誤魔化すと態度は急変し、快く迎え入れられた。入居者総出で歓迎会が催されたが、ホラー映画のロケハンだと明かすとさらに態度は一変し、会はお開きに。夜も深くなっていたため、外に出ないよう念を押された上で、団地の空き部屋で一泊することになった。
外に出た3人。管理人に見つかり、会わせたい人がいるとのことで、とある一室に通される。そこには入居者の敬意を一身に受ける女性、加奈子。肉体の死後も魂は生きると言う彼女の話と共に、部屋中をポルターガイストが襲う。狂乱に陥った入居者達。徐にある少年の母親が投身自殺した。団地の奇怪さは増していく。人が死んだ翌日に当たり前のように催されるランチ会、同様の白と赤の衣服を纏う入居者達、異様に強い一体感で踊る女達、度重なるポルターガイストとカメラを通して見える霊体、さらなる少年の自殺、彼らの絆に取り込まれていく真帆と啓太。
孤立した史織は加奈子の指令で管理人らに捕らえられる。脱走して逃げようとした際に見つけたのは、投身自殺した母と子に血抜きの加工を施す離れ。入居者達に見つかった史織が咄嗟に逃げ込んだ先は加奈子の部屋だった。部屋には椅子に座った男の遺体。そっと現れた加奈子は、それはかつて自殺した恋人だと言う。加奈子が問い掛ければそれはポルターガイストで応えた。パニックに陥った史織は、入居者達と彼らに同調した真帆と啓太と共に、離れへ連れて行かれた。死後の世界を滔々と語る加奈子は史織に「死ね」とナイフを差し出す。死恐怖症の史織は、常人以上に死への恐怖を抱きながらも、それでもみんなと一緒ならと、真帆と啓太を刺した。その後自らの腹を刺し、自分を抱きかかえた加奈子をも二度突き刺した。

帰宅した史織。大学へ行くと、生と死の境界について話した講師は突然辞めていた。
病院には意識も戻らず寝たきりの母。生命維持装置を外した史織の後ろに、母が姿を現した。抱き合う母と娘。
朝日が上り、団地の一室で史織は目を覚ます。カーテンを開け、晴れ渡る窓の外を見つめる。


っていう。白い団地の何階かの一室に赤い服の人が佇んでるめっちゃ不穏でゴリクソかっけえビジュアルって、あんな清々しいラストシーンのものだったのか。

死後の世界というのが存在する世界観にしたのね。結局現世に居候してるだけだから「死後の世界」ってより「死後の生活」じゃねって思ったけども、この世をかたどった場所に移ったのかもしれない。
大学にあの講師先生がいなかった(退職していた)のは、まだ存命の先生だからこっちの世にいないからだろうな。あんなに誰にも彼にも手当たり次第話しかけてた史織が棟からわらわらと出てくる学生達をただ座って見つめてるだけなのは、そっち側とはもう関われないからか。そして、母親の生命維持装置を外して殺したからそっち側で再開できて、現世の方では医師やら看護師やらが大慌てで病室にすっ飛んできたと。
まあなんか向こうで満たされてそうだしよかったんじゃないか。死恐怖症だかで自分の存在が消えるのが堪らなく怖いみたいな話だったけど、消えなかったね。


それにしても、系統としてはカルト宗教みたいな方向性だったのは意外すぎた。管理人も屋上にいた人たちも歓迎会で史織らを囲った面々もみんなこの世のものではない存在だと薄ら思ってた。何かもわかんない鍋が出てきた時なんかは、よもつへぐい的なもん食わされてるものと思ってた。
てか食い物も飲み物も最後まで何なのかわかんなかったの、めちゃめちゃ嫌なかんじしてて良かった。クライマックス辺りで史織がむりやり飲まされてた辺り何か精神に作用する類のものにも見えるけど、加奈子の背景を聞くにあいつ教祖みたいな存在になろうとしてなったわけじゃないみたいだから別に洗脳目的のものじゃないような気もする。
というか加奈子、時に純粋に亡き人を悼む(まあ多少イッちまってる)人で、時に幸福がどうとか言い出す新興宗教の教祖みたいな人で、掴みどころないとこ気持ち悪くてよかったかも。悪く言えば都合いい時に都合いいキャラを出す一貫性のない登場人物なのかもしれんけど、気持ち悪がらせる役割はしっかり果たしてたと思ってる。

もーほんとカルト宗教みたいなやつ苦手だから不意打ち食らってめちゃめちゃキツかったっす。前情報を徹底的に避けるスタイルが裏目に出た。
俺『ウィッカーマン』とか観てても「全員殺せ!」とか思うタチだから、史織の「死にたくない」連呼からの「でもみんなと一緒なら」のくだりでめちゃめちや期待しちゃったけど、3人かあ。まあでも上出来かなあ。奴らのアタマはきっちり獲ったし。ざくざく刺された加奈子も「上出来よ」って言ってたし。『デス・オブ・ミー』なんかは全部ブッ飛んで最高だったけど、まあそんな壮大なスケールの話でもないですし。


それにしても、史織の言う通りなんでみんな死なねえんだろ。べつに「もし死んでもみんな一緒だよ」って思ってる程度で「死こそ幸福」は飛躍しすぎてるか。あんまし文脈覚えてないけど。
じゅ

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