悪魔の毒々クチビル

X エックスの悪魔の毒々クチビルのレビュー・感想・評価

X エックス(2022年製作の映画)
3.0
あ、そこはボカシ有りでも全然大丈夫です。はい。


今話題の老夫婦スラッシャーを観てきました。
まず最近は映画館まで足を運ぶのすら億劫になっている中で、とっとと観に行ってきた自分を褒め称えておきます。よくやった俺。
タイトルの"X"は劇中でも触れられていた未知の才能(X factor)だったり、当時ポルノのレイティングがXで表されていたりといくつか意味はありそうですね。

じゃあ内容はと言うと……
正直な話、本編からは話題性に見合った魅力は全然感じませんでした。
理由は色々あるんですけど、まず展開が遅め。
ヌッと姿を表す老婆だったりアレだったりと、如何にもな演出はあれどかなり長い間ポルノを撮る集団の奮闘を見せられます。
特に今作は無駄に性描写が濃厚で、ホラー演出や殺人シーンよりもセックスシーンの方が熱量を感じるレベルでした。おっぱいがいっぱい!!
そう言う意味ではブリタニー・スノウは相当頑張っていましたし、そこは素直に称えられますね。「ピッチ・パーフェクト」の頃が一番印象的だった身としては尚更。
あ、ジェナ・オルテガだけは完全に脱がないよ。

その後も老婆パールの老いに対する絶望や若さへの嫉妬なんかを、主人公グループの愛の語り合いやらと対比させながらじっくり進めていき、「あぁ、シリーズものだし取り敢えずパール推したいのね」と気持ちは分かるんだけど長い。
どうでもいいけどポルノ撮影において、あの若手監督君がやたらと只のポルノにしたくない的な事を熱弁していましたが、もし彼の精神を引き継ぐ人が業界にいたら滅茶苦茶重厚なドラマパートのある「カタークナイト」とか製作されていたりしてね。

漸く老夫婦が殺し始めてからも、エンジン掛かるのが遅すぎたのもあり最後までそんなに上がるものもなく「あ、終わりか」と。
ゴアはあったり無かったりパターンで、一番強烈なのは頭潰す所でしょうか。
観る前からトビー・フーパーを始めとしたオマージュ満載なのも知っていましたが、肝心の内容がイマイチなので段々気にならなくなってきました。
ただ「いけにえ」かと思いきや「沼」でした!な場面は今作で一番良かった箇所でした。
あの状況だと狂ったジジババよりあっちの方が恐いっす。
それとタイ・ウェスト曰く「パールはレザーフェイスを倒せる。想像以上に強い」と語っていましたが、キラーとしての強さも誇示したいんだったらあの反動で吹っ飛ぶシーンは見事に逆効果だったと思うのですが。寧ろちょっと笑っちゃった。

若者だけでなく老夫婦のセックスシーンまであったりと、敢えて誰得な描写まで攻めてくる姿勢も何か今作だとあざとく思えてしまいました。
因みにパールもミア・ゴスが特殊メイクで演じていて、ブリタニーと言い女優陣は結構頑張ってはいたのに勿体ないですね。

ここからどう続くのかと思っていたら、成る程そっちですか。2作目でもうそれやるんかい。
ただやっぱりパールにそこまで惹かれなかったので、特にワクワクもしなかったです。
A24の知名度も相まって公開前から映画ファンの間でも期待が高まっていたかと思いますが、俺にとってはもう一度観たいと思えるような作品ですらなかったです。


タイ・ウェストは製作過程でゴタゴタがあったとは言え、グチャグチャスプラッター「キャビン・フィーバー2」みたいなノリでもう一本くらい撮っても良いと思うの。
最近はオマージュだったり、参考にする作品がクラシカルで真面目とも言える映画が多いけど、それこそフーパーの「悪魔のいけにえ2」みたいなバカスプラッターだけど強烈に印象に残るような怪作を現代に蘇らせる職人がちらほら出てきて欲しいなと思う今日この頃でした。