深獣九

X エックスの深獣九のレビュー・感想・評価

X エックス(2022年製作の映画)
4.0
【2023.7.1追記】
アマプラに『X』来た!
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
ありがとうアマプラ!
で、『Pearl』の公開が近づいてきているのでおさらい。劇場では冒頭7分を観そこねたし。

あらためて観ると、なんかもう、すべてが美しいんだよね。映像はもちろん細かい演出とかさ。牛乳パックの人探し広告は、アッと声が漏れたよ。直前に「あれ? こいつ誰? RJ?」と思ってから。ウェインの経営する店のイラストも鰐なんだよね。楽しすぎる。
店のある場所も港湾の工場地帯。一攫千金を夢見るやつらの心情が、セリフはなくてもバッチリ伝わってくる。こういうのがいいんだよ。もちろん言葉も大事。だけど、言葉がなくても伝わることも大事だし、それは美しいのだ。

良い映画は何度観ても感動する。来週の『Pearl』も楽しみだー。

-------
(鑑賞一回目)
人生を悔いたまま老いさらばえ、健忘の果てに若い女への羨望と嫉妬だけが残った老女。私の未来は違うと言えるだろうか。
年老いた奥さんに寄り添い続ける老人の姿を、誰が嘲笑うことができようか。
かように『X』は高齢社会と老老介護の問題を扱った社会派映画なのである。

……違うかな?

いちびりはほどほどに。この作品はみんな大好きA24プロデュース。

「ねえ〜なんか面白い映画みたーい」
「うーん、とりあえずググってみる?」

そんなときにはA24。

「退屈すぎる……」
「いい年してゴロゴロばかりしてないでたまには外に出たらどうだ」

そんなときにもA24。

「おかぁさ~ん、任天堂スイッチ買ってよー」
「お父さんに言いなさい」

息子のわがままにもA24。怖いオバアが一発で黙らせます。

というくらい絶大な信頼を寄せるA24なのだ。本作品もさすがのクールでスタイリッシュな田舎系スラッシュ。
まず舞台が1979年のテキサス。もうこれだけでワクワクが止まらない。
さらにこの地を訪れた御一行は、ポルノ映画で一旗挙げようとする野心家たち。胡散臭さがたまらない。
ミア・ゴス、ブリタニー・スノウ、ジェナ・オルテガの女優陣も実に魅力的。化粧のせいか派手な美人ではないが、表情や仕草がとにかく素敵。物語に華を添えるどころか、鮮血の花びらを撒き散らして咲き乱れるのだ。キャスティングのうまさも、A24のお家芸である。

スラッシュ映画のキモ、殺り方もバラエティに富んでいる。ネタバレなので詳細は末尾に記すが、70年代ホラーの名にふさわしいラインナップだ。
殺ったあと、死体に干し草をかけるおばあの姿はかわいかったな。

さらに好みなのはカメラワーク。
例えば1フレームで切り替わるカット割り。例えば真上から捉えたショット。池に小さく浮かぶミア、近づいてくるワニ。まるで絵画のようだった。

なんかいそうこうなりそう、と思うとそのとおりになる素直なシナリオもスタイリッシュ。

そんなわけで大満足の『X』だったわけだが、実は寝坊してしまいオープニングと冒頭5分くらい見逃している。一生の不覚である。そこにあるお宝は、配信を楽しみに待つことにする。
逆にエンドロールで席を立ったあなた、とっても損してますよ!これから観ようとしている皆さまには、ぜひともご注意いただきたい。劇場に灯りの点くまでが上映ですよ。

ところでポスターのコピー「死ぬほど快感」は、死ぬほどダサいので本当にやめてほしい。






●ネタバレ
作品を彩る痛いシーンの数々
・ナイフめった刺し
・素足で釘踏み
・覗き穴から五寸釘
・至近距離からショットガン
・ワニの餌
・車で頭蓋骨粉砕

ラストのミアにはシビレた。
深獣九

深獣九