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X エックスの青ののレビュー・感想・評価

X エックス(2022年製作の映画)
3.5
【ウェンズデーは脱がないよ】

—ザックリあらすじ—
若者6人がテキサスの田舎町でポルノ撮影。
老夫婦の住まう敷地にある小屋でおっ始める。
ブシャー!ウゲー!ひーっ!

いつかのスラッシャー映画を踏襲したセオリー通りの様でいて、そこはA24作品。一筋縄とはいかない。
しかも三部作(の第一部?)らしい。
最終的にどんな締め括りになるのか、今後が楽しみ。

【以下、ラストのネタバレこそしていませんが、予備情報不要の方は読まないで下さい。】



















—作りやすい時代背景—

気のせいか、昨今70〜80’s設定の作品をよく目にする。
スマホやネットも無い時代であるから、危機を脱出するアイテムが限定され、ストーリーテーリングがし易いのかな?などと穿った見方をしてしまう。
いや、個人的には『砂埃・乾いた空気・田舎・ネット無し』が揃ったホラーに惹かれがちなので、そこはさほど気にならない。

その理由以外に70年代を扱うともなれば、やはり「終わりの始まり感」なのかもしれない。
マンゴ・ジュリーのヒット曲In the summer timeが流れ、1979年のアメリカとくればヒッピー文化の終焉である。
ベトナム戦争が終結し、アメリカ初の敗北に誰もが「この国はダメだ」と落胆し、若者は葉っぱを吸いながらフリーセックスとスピリチュアル、不定住の旅へと散り散りに。
「資本主義はクソだ」と叫んでいたものの、この先何を目標に生きればいいのか?と不安を抱えつつ、結局は「金さえあれば、一発当てれば」と金儲けを模索する。

おそらく「もうバカはやってられない。騙す側にならないと俺の人生詰む」なんて思考があったのかは定かではないが、40を過ぎた元ヒッピーのウェインは若者を引き連れ、保守的文化代表みたいなテキサスの田舎町へ。
で、もう意味の無い旅をするのは無駄だと悟りきったヒッピーくずれが何をしにそんな田舎へと来たかと言うと、ポルノ撮影である。

(これ、実はその時代には珍しい事では無い。
ラブ&ピースを謳いながらヒッピーな生活をしていたら、じわじわと歳を重ねてしまい、本気で焦った末にポルノ作りに手を出す若者は少なく無かったのだ。
俗に言う『ブルーフィルム』なるものは、この頃大量に作られ出回った。
「有名にしてやる、女優にしてやるから」と行き場の無い女子をそそのかし…ってのは、今も昔も変わらないかもしれない)



—ヒッピーぶっころ—

ブラウン管から垂れ流される保守的で排他的な教義により自分達を守ってきた老夫婦の元に、悪魔的な自由を謳歌する若者がやってくる。
若者の考えも文化も理解したくない、思考的には『自分達が一番美しかった頃』で止まっている2人であるが、妻(パール)の止まぬ性欲と若さへの羨望と渇望。
妻への愛故にその望みを叶えようとする夫ハワード。
その欲求は殺意へとなる…。

ここまでなら、若さと老に対する相容れない渇望と憎悪と不安により起きた映画的にありがちなストーリーとなるが、以下の事柄を並べると次作への伏線が見て取れる。











【見て気付いた限りの箇条書きですが、ネタバレになるかもしれません】

—数々の対比と次作の伏線?—

若さ故の自由で奔放な行動。
老故に制限される身体と物理的な動き。
ジロジロ見る側、見られたくない側。
レモネードのシーンで、しつこい位のカットバック(相手が若ければエロ展開。老人なら不安や恐怖)。
主人公マキシーンと、パールが1人2役。
第一次第二次世界大戦とベトナム戦争。
ポルノシーンでの繰り返す騎乗位。
滅多刺しシーンでの騎乗位。

ウェイン→マキシーンに「お前は特別」
ハワード→パールに「お前は特別」
マキシーン→有名になりたい。
パール→ダンサーを諦めた。

マキシーンの青いアイシャドウ。
人形にも青いアイシャドウ。
パールもあるシーンで青いアイシャドウ入れる。

マキシーン「私らしい人生以外は受け入れたくない」
パール「満たされない人生だった」
マキシーン「愛とセックスは切り離せる」
パール「愛して欲しい求めて欲しい」


他、湖に水没している前被害者のものと思われる車。
地下室にパンツを脱がされた遺体。不能(勃たないわけじゃないが、心臓に負荷をかけられない)のハワードの代用として監禁されていた。
ハワード「話し合って決めたじゃないか」
(自分はできないから代わりを見つけていた)


残り2作品全てを見ないと今のところ分からない部分があるが、概念としての「1人2役」ではなく、具体的に同一人物なのでは?
霊的なものか、タイムリープ的なものか?
(牧師が繰り返す「これこそ聖なる介入だ!」のセリフ)

さて、続編はどうなることやら…。


ちなみに今作の監督は『サクラメント 死の楽園』も手掛けている。
1978年に起きた「人民寺院 集団自殺事件」をテーマにした作品。
終始流れる牧師の説教シーンはそれをも彷彿とさせる。
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