ささきたかひろ

X エックスのささきたかひろのレビュー・感想・評価

X エックス(2022年製作の映画)
3.7
冒頭の納屋の扉を使ってアスペクト比を疑似トリミングする見せ方で期待値がグググっと上がるのを感じた。「この監督は3次元から2次元へスケールを落とさざるを得ない「映像」の弱点と強みを知り尽くしてるな。」そんな期待だ。

人里離れた一軒家、老夫婦、能天気で意見の合わなさそうな若者たち、ポロリ、そしてよく育ったワニ、で、ポロリ。

ホラームービーを連想するにはあまりに捻りのないこれらの手札をどのように切って行くのか。物語が動き出すと私の興味はそこへ移った。

しかし…動かない。かれこれ1時間劇中劇「農場の娘たち」の撮影だ。これでは18禁の「サマーフィルムにのって」ではないか。違う、ポルノ映画作りに情熱を傾ける若者の映画を見たいわけじゃないんだ。もっと人間の頭がスイカみたいに(自己規制)パッカーンとか、鮮血ブッシャーとかが見たいんじゃ!

と、我慢の限界を迎えそうな頃に始まる怒涛の殺戮ショー。さすがはA24、期待を裏切らない。リアルな死体損壊の描写は令和のターヘルアナトミアと言っても過言では無いでしょう。

持論として魂の離れた肉体が造形物としては最も完成されていると思うグロ耐性の強い私ですが、デヴィッド・リンチ然り、アリ・アスター然りゴス描写にこだわる映像作家はそのことに気がついているから彼らの映像はあんなにもキモ美しいのだ。

いくつかの名作ホラーのオマージュもあり、そこまでホラー映画に詳しいわけない自分でも十分に楽しめた。

見るつもりは無かったし、監督の名前も主演女優のことも知らなかったけど明日続編「パール」を見に行く運びとなりきっと公開が控えている部作の完結編「マキシーン」も見るのだろう。

ま、長々と書いたんですが、ミア・ゴスめっちゃ良いですね。
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