このレビューはネタバレを含みます
一攫千金を企む3つのカップルがアダルト映画の撮影をするために訪れた家でその家の持ち主の老夫婦が頭のイカれた殺人鬼でそれに巻き込まれていく話。
若い頃美しかったらしい老夫婦の婦人(老婆)はどう見ても見た目が100歳以上で旦那から相手にされなくなっていた。
さらには旦那は心臓病の持病を抱えていたからそれがストーリー上、問題を複雑にさせている。
あと何よりもこの映画の最大の見どころはこの老婆の容姿の恐ろしさとその怪しさだ。
そして老婆もそうだが旦那も人に対しての共感性ゼロの典型的なタイプだと思う。
重要な点で言えば、老婆の神経構造は他者を否定(この場合、殺害)することによって自己の存在を確認している、そして老婆自身の自己の存在を確認するためには他者を否定(殺害)し続けなければならないという負のループに陥ってしまっているということになっている。もちろん当の本人たちはその自らの心理構造を少しは分かっているかもしれないが、やめたくても止められない。それはある意味で人間の本能というか脳の機能によるものだと思う。
はっきり言って、この老婆は人間の老病死と(愛も含めて)この世のものは無常である(常に移り変わる、ずっと同じではない)ということを全く知らないということだと思う。
そこでそこに訪れた美しくて若い人たちがすべてこの共感性が欠如している老夫婦たちの犠牲になっていく。
もちろんそれ以前に自主制作映画のクルーたちの危機管理能力がゼロに近いとも言える。
この映画制作のクルーの自称プロデューサーが最初にこの爺さんに会ったときの異常さに気づくことなく甘く見すぎたのは彼らの最大の失敗だったと思う。
とにかく問題の核心部は、狂ってしまっている老婆の旦那もまた一緒にいることによって老婆と同化しているという点だ。
ところで映画の中間部に少しダラダラとしたシーンが長く続き、そこがどうにかならなかったのかと強く感じたがそれ以外はとてもよかった。
そして何よりもカメラの動きや動画の撮り方や作品全体の怪しさが素晴らしすぎる。
あと配役もよかった。
人間の本能と欲望に基づく人間の深層心理の構造がもの凄くよく描写されていた。
個人的に『ミッドサマー』や『LAMB/ラム』などには到底及ばないと思うが本当に見てよかった。怪しい映画が好きな人にはもうたまらない作品だと思う。
本作品はおそらくは低予算なのかもしれないがそれにもまして意図的にB級(C級)っぼい感じに作られているような気がしてそれがまたよかった。
正直言って作品全体から観て本作品は素人が撮ったようなチープな動画では決してないという印象。
監督と撮影監督は映画の基礎を知り尽くしている人だということは間違いないと思う。
今後もA24が絡む作品は見逃せない。