女優として大成することを夢見るマキシーン（ミア・ゴス）は、恋人でプロデューサーのウェインと共に少人数のクルーでポルノ映画の撮影をするために田舎の農場にやってくる。農場の持ち主である老夫婦に内緒で撮影を進めるクルーだったが、妻であるパールという老婆が奇妙な行動を見せるようになり……というお話。
『悪魔のいけにえ』＋『ヴィジット』とでも言うような、田舎に行ったら老人に襲われた系ホラー。ポルノ映画を撮影する若者がジジババに殺されるという変な話なんだけど、A24製作ということもあってか、どこかアート映画的なシリアスな雰囲気があるのが特徴的。マキシーンが湖で泳ぐシーンとか、時折ハッとするような美しい構図が出て来たりと、映像にもこだわりがある。
ただ、正直題材と雰囲気が噛み合っている感じはせず、もっとバカに振り切った方が良かったんじゃないかなという気がした。ホラーにしてはタメが長くて最初のショック描写まで映画の半分以上を使っているし、そこからの展開もそこまで目を見張るような何かがあるわけでもなく、あまり気分が盛り上がらないまま終わってしまった。いかにもホラーの主人公っぽい純朴少女が脇役だったり、ありがちな“セックスしたら死ぬ”というセオリーが意外な形で使われていたりと、ホラーのお約束を逆手に取った展開に新鮮さはあったが、だからといって映画が面白くなっていたかと言われるとそうでもなかったかも。
三部作の一作目で、2作目の『パール』がこの前公開、最終作の『マキシーン』が公開を控えているみたいなので、まとめて観たらまた評価が変わってくるかもしれないが、少なくともこれだけではそこまで評価出来る作品ではなかったかな。
(2023.107)
