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ALIVEHOON アライブフーンの06のレビュー・感想・評価

ALIVEHOON アライブフーン(2022年製作の映画)
3.6
倒産しそうなドリフトチームを救うために、グランツーリスモ日本一のゲーマーが、初めて現実のドリフトに挑む!


グランツーリスモの延長で視聴。ドリフトは素晴らしいが作劇に難がありすぎた。
怪我したトップレーサーの代理を務める相手を探すのだが、条件が最悪。給金を払えないのに、一流の腕を期待する。おまけに強引に連れてきた助っ人の前で「このままじゃ会社倒産しちゃうよ!」とお涙頂戴のお芝居。悲惨な困窮具合を叫んで、主人公の善意に漬け込む幕の開け方は、いい加減ダサいのではないか?全体的に権利の主張が強すぎて、げんなりしてしまった。
観客視点の欠如も気になる。ドリフトレースというものは、タイムではなく芸術点を競うらしい。いわば通常のカーレースがスピードスケートだとしたら、こちらはフィギュアスケートだ。
なのにその説明が丁寧にされていないため、ラストの真剣勝負の感動に乗れない。どっちが勝ったかわからないのに、勝利の雄叫びを挙げられても困るのだ。
また、ライバルキャラもいまいちである。最初から才気あふれる主人公は、特に挫折もしない。ならば、絶対王者のライバルがいれば盛り上がるのだが、そんな演出には見えない。この点「グランツーリスモ」や「ワイルド・スピード3」は、そこが上手かった。

もしかしたら、主人公が天才で最初からのドリフトが上手かったのは、車を壊す予算がなかったからではないか、と邪推してしまう。しかし、ならばその代わりに作劇に工夫がいるのではないか?

反面、ドリフトシーンは一流。
CGなし、現役のレースカーで、トップレーサー達のスタントで撮られたドリフトアクションは、そのリアル感に息を止める。一瞬本物のレース映像を見ているのかと錯覚する。リアルレーサーも幾人も出場しており、(しかもレースシーン)映画の後にドリフトの試合映像を見てみたら、彼らが生のレースしていて驚いた。そういう楽しみ方は、この映画でしか出来ないだろう。

余談だが、シムドライバーは初見でドリフトが出来るのか?峠の多い日本で生まれた特殊な「ドリフト」という技術。これは観ている限り、レースよりも体感的なテクニックが必要とされる気がする。コースを知っているから有利に働くというものではない、完全にフィジカル頼りというか。

そのあたりも含めて、車映画に興味がある人は、観て損はない。
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