Oto

各駅停車のOtoのレビュー・感想・評価

各駅停車(1992年製作の映画)
3.8
名作短編。オチに自信があればここまで引っ張っていいのか、と教わる映画。本編の8割くらいが「電車から降ろしてくれ」という交渉、つまりは「降りたい」という切実さの描写に使われている。

何が言いたいかというと、短編の尺なんて特に、1つのことしか言えないということ。「人の善意が裏目にはたらくことってあるよね」っていう人間の悲哀(セラヴィ)を伝えるためだけに8分近く使っている。

面白くないCMや素人の短編に共通するのは多くの場合、「要素を詰め込みすぎて結局何がやりたいのかわからない、ということなので、海外の映画学校でこの作品が教科書がわりに使われているというのも納得。きっと長編もそんなに変わらない。

コントっぽい・CMっぽいと思ったのは、リアルに根ざしながらも、人格を誇張してわかりやすく描いているからかな。「今日会社に遅れたら俺は死ぬ!」という切実さって実は自分もたまに感じていることだし、相手が優しさでやってくれていることを迷惑に感じる機会もよくあるし、普遍的なインサイトを押さえてる。

「冷たい視線」と「成功への祝福」のためにあれだけの人数のモブを用意しているのとか好き。OPタイトルも意外と凝ってるし、丁寧な作品。

https://youtu.be/Qo-RZ1ann2I
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