柊

わが青春つきるとも 伊藤千代子の生涯の柊のレビュー・感想・評価

3.3
題材はとても大切な事でもちろん知っておいた方が良いのは当然。
しかしながら映画作品として観た場合の評価となると結果ありきの作品のように思えてしまった。
こんな立派な人がいました。治安維持法下の時代において拷問を受けて亡くなった有名な人は小林多喜二をはじめほぼ男性。
しかし実際には獄中に繋がれた多くの女性がいたという事実。男性が転向をしてこれまでの思想をかなぐり捨てていく中、最愛の夫も転向をしていく中、信念を貫き通した伊藤千代子始め世にはそれほど知られていない女性達がいましたと言う作品である。

スクリーンに映る女性達はあの時代ながら思想形成がすっかり出来上がっているのがどうも違和感がある。
例えば伊藤千代子を見てみるといったいどのような過程でマルクスを知り、貧しい人や女性が皆平等に生きられる社会が理想の社会と思えたのか?経過がごっそり抜けている。当たり前のように打倒天皇制となっているのはいささか性急すぎるように思う。それに話す言葉も今の私たちが捉えたような社会の矛盾を指摘する。当時はまだ女性の参政権も無ければ、女は民放に支配されている時代。目覚めのきっかけが何であったのか説得力に極力かけている。
鑑賞者が皆民主的な思想を持った人とは限らない…むしろそこにだけ向けて映画を作っているような脚本に脱力する。こういった事に両手をあげて賞賛するような人にだけ向けて作っていてはダメなんだと思う。
そう言う意味ではこの映画は稚拙な脚本と演出,演技であったと思う。

そんな中でやっぱり竹下景子のワンシーン、石丸謙二郎の特高役は上手い!

知る事は大事だけど、共感はされにくいかもしれないなぁ。
それに以外に浅野あきらがクズだった。見方によっては伊藤千代子都合のいい女扱い。
柊