Monsieurおむすび

泣けない男たちのMonsieurおむすびのネタバレレビュー・内容・結末

泣けない男たち(2017年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

イスラーム映画祭7にて。

ボスニア紛争により心身に傷を負った男たちがNGO主催の集団セラピーを受けている。
しかし、彼らの目的は〝癒し〟ではなく、セラピー完遂によって支払われる報奨金。
セルビア人、クロアチア人、ボシュニャク人に分かれ戦闘を繰り返した彼らには、終戦から20年以上の年月が経っても克服できない壁があり、お互いを受け入れられなかった。

戦争による加害を悔いる者。
それを認めない者。
相手を憎む者。
帰還兵に何もしてくれない自国を責める者。
様々な痛みを抱え生きてきた辛い現実が変わることはない彼らだが、衝突しながらもセラピーを通して互いの悲しみを共有していく。。。


実際にボスニア紛争に従軍したアレン・ドルリェヴィチ監督は脚本も担当したことから、実体験が反映されていると思われる。
彼は同じボスニア紛争を題材に、戦争の最たる被害者である女性や子供を描き続けるヤスミラ・ジュバニッチ監督の下で映画を作っていたが、彼が題材にしたのは加害性のある男性。
しかし、有害な存在である彼らもまた戦争の被害者であり、それ故に泣けない。

物語は戦争を体験していない子供たちを眺める彼らのショットで締め括られる。
決定的な和解も、涙もない。
きっと自分たちの世代では、それはないと理解している。だからこそ、彼らは未来への願いを次世代へ託しているように思えた。
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