元より映画化向きな原作だと思っていましたが、タナダユキ監督が見事に映画化していました。
画面の中で現実とフィクションがないまぜになって、生死もないまぜになっていくのが、映画だとより感じさせられました。
人間のわかり合えなさ、他者性、彼女らを取り巻く環境の残酷さ、マリコだけでなくシイノもいつ死んでしまうか分からない危うさ等々、画面には常に日常にある危ういものが潜んでいます。
原作の印象的な構図を作品がよりフィクショナルになるときに挿入されることが原作ファンへの目配せでもあり、かつ作品性を高めており、そこも素敵でした。
あの原作を永野芽郁さん主演でやるのか、と観る前は懐疑的でしたが、なるほど、永野芽郁さんが演じることでより痛々しさ、しんどさが際立つなと納得します。
同じ永野芽郁さん主演作で亡き者を思う映画として『そしてバトンは渡された』がありましたが、ラストカットが同じキャストでこうも違うかと、唖然としました。本作の方が上品で、想像を掻き立て、寄り添ってくれる作品だと思います。