ぶみ

マイ・ブロークン・マリコのぶみのレビュー・感想・評価

マイ・ブロークン・マリコ(2022年製作の映画)
3.5
勝手に逝った、あんたのために。

平庫ワカの同名漫画を、タナダユキ監督、永野芽郁主演により映像化したドラマ。
転落死した親友の遺骨をその親から奪い取り、昔親友が行きたいと言っていた海へ遺骨とともに向かう主人公の姿を描く。
原作は未読。
ブラック企業に勤める主人公シイノを永野芽郁、亡くなった親友マリコを菜緒、道中で出会う釣り人マキオを窪田正孝が演じているほか、尾美としのりがマリコの父として、吉田羊が父の後妻として登場。
物語は、予告編にもあるように、シイノが遺骨を奪うという衝撃的なシーンでスタート、以降、遺骨を胸に旅をするという、他に例を見ないロードムービースタイルで進行。
そんな中でも、マリコが回想シーンや、幻影として時折登場することから、シイノと二人旅をしている情景が伝わってくるし、途中出会う窪田演じるマキオが良い具合に緩急をつけてくれている。
特に、着実にキャリアを積みつつある永野が、スーツ姿のまま川の中を歩くは、くわえ煙草に酒を呑んではくだを巻くはと、かつてない役柄をパワフルに演じていたのは見逃せないポイントであり、まさに新境地といったところ。
そして、奈緒や窪田は相変わらずの安定感であるとともに、登場シーンは少ないものの、吉田が彼女を支えるかのように、しっかりと絵面を引き締めているのも見どころの一つ。
また、青い森鉄道が走り、山本コウタローとウィークエンドの名曲「岬めぐり」を彷彿とさせるようなバス旅が繰り広げられたロケ地、青森県八戸市の景色も旅情感に溢れたもの。
原作を読んでいないため、その再現度や展開の良し悪しはわからず、出来過ぎな展開も少なからずあるものの、かつてないスタイルの珍道中の先に辿り着いたシイノの表情に心地良い余韻がもたらされるとともに、豪華な俳優陣ながら、シネコンよりもミニシアターで上映した方がピッタリくる一作。

良い人って、別れ際ゴミムシって言わないね。
ぶみ

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