このレビューはネタバレを含みます
原作の衝動的な疾走感は正直あまり感じられなかったのだが、それでも映画版は映画版で、とても好きな作品だ。
原作の核であるシイノとマリコの関係を活かしながら、自殺によっていなくなった者・残された者、その2つの間に残り続ける過去を掘り下げて、作中の少ない登場人物間の関係性を構築してたのは上手いと思った。
登場人物それぞれの背景を掘り下げ過ぎることなく、少々ドライな距離感を保ちながら85分に纏めたのも好感。
溢れんばかりの想いを言葉を捲し立てて爆発させる様や、心の声の呼びかけは原作であった部分で、それらを残したままカメラが一歩引いたような距離で、無言のシイノの背中・横顔を映す。映像化で生まれる原作以外のカットによって、ハードボイルドな面がより一層磨き込まれた感じがあった。
終盤の高校生を助けるあたりは過去への未練と強く絡み合っており、特にそんな印象がある。また、朝の海辺や別れ際の駅でのマキオとのやり取りが絶妙に良い。
永野芽郁さんはどんな作品でも割りと馴染める役者さんだと思っていたけども、本作が一番好き。
