高井戸三郎

マイ・ブロークン・マリコの高井戸三郎のネタバレレビュー・内容・結末

マイ・ブロークン・マリコ(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

画面にしばしば、いい顔、佇まいが写されていたと思う。
特に、タイトルバックのマリコの眼が真っ黒に塗りつぶされて見えるショットは、マリコという人物が、タイトル通り壊(さ)れていることを視覚的に示しつつ、原作に対する本作のスタンスをも明確に示している点で評価に値すると思われる。

ただ、シイノがマリコの死を知る定食屋での客の会話、バスで出会う女学生との下り、課長とのやり取りなど、シイノが感じる閉塞と救いを彼女の外にまで広げてしまっている点に、原作の持つパーソナルだからこそ濃密な小ささを扱いきれず、 85分間を持て余している印象も受ける。

私が抱いたその印象は、シイノというキャラを映画の画面に定着させる際の泣き落としとドクターマーチンの下りをそのままやってしまうという、マリコとマキオというキャラへの的確な味付けに比してあまりにも拙さを感じる手つきとして裏打ちされてしまっているのではないか。

ひったくりが一緒に崖から落ちて打ち上げられているのに、少し笑った。
高井戸三郎

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