鎌谷ミキ

マイ・ブロークン・マリコの鎌谷ミキのレビュー・感想・評価

マイ・ブロークン・マリコ(2022年製作の映画)
5.0
【原作再現度120%(上映時間長ければもっと高い)】

[三行あらすじ]
ブラック企業のOLシイノトモヨ(永野芽郁)は"親友"のイカガワマリコ(奈緒)が自死したことをテレビで知る。いても立ってもいられずシイノは仕事を放ったらかして…

[レビュー]
本作こそが原作を読んでまで待ち望んでいた誕生日映画です。まず、タナダユキ監督よくぞやってくれました!泣いた泣いた…

原作マンガ平庫ワカ著『マイ・ブロークン・マリコ』を読んだ人全てにオススメできる!!!
今日はサービスデイだったから、ほぼ満席だった。めっちゃ嬉しいよ(静かな場面でポップコーンは気をつけて食べてね、シネフィルからのお願いだよ😇)

ネガティブな場面があると、それでマイナスになることが私の中にあって。で、一緒に観た人と語り合ううちに、原作にもある"ある場面"の必然性を確信して、満点をつけさせてもらいました。

・原作セリフの必然性を感じる演者の熱演
これに関していえば、芽郁ちゃん、奈緒ちゃん、マキオこと窪田正孝くん、この3人みんなベストアクト!
おそらく何回も撮り直しているだろう(タナダ組参加経験あり)長ゼリフや説得力をもたせるシーン、どれも素晴らしい。演技が神がかっているとは言い過ぎと思われるが、マンガの登場人物が飛び出してきているといったらわかってもらえるかな。ただ原作セリフをなぞった場面は一切出てきません!親友を「ダチ」と呼び、タバコスパスパ、酒飲み。でも、根は優しいシイノとワケありで病み気味のマリコの動く姿を、見て!!!

・本作のテーマとは何か
本作はシスターフッドというのにカテゴリーされるらしい。その意味は演出ですぐに理解できる。私は過去、シイノではなくマリコだった。そして今、シイノの立場になってきている。年齢と経験と共に人は変化していくもの。両方の立場をわかった上でこの"誰も入ることができない深い繋り"それは、憧れでもある。人に対してそこまで干渉したいされたい関係というのは、尊いものであることは本作を観ればわかるはず。

・人が亡くなるということは…
ラスト付近がそれについて描いている。原作も映画もとても近い着地点である。マキオの言葉、ある人からの手紙。喪失を埋めるのは時間と人だと。

・原作ありきの作品でタナダ監督らしさとは
原作が素晴らしかったら、改悪をしなければそれなりの作品になるだろう。しかし、タナダ監督はテーマを受け取り、自ら脚本にも参加して原作にはないセリフを慎重に追加していた。そこに気づいた時に、原作ではなんてことないセリフが"生き"気づいたら涙していたのでした…

『ふがいない僕は空を見た』がタナダ監督の最高傑作だと私は思っています。甲乙付けがたい。テーマが違うから…
私はそこを曖昧にして『スパイダーマンNWH』と同得点で本作を並べていいのか、その一点である…年末のベストランキング波乱の予感!

「今度こそあたしが助ける。待ってろマリコ」

[余談]
劇中のドクターマーチンは永野さんが11ヶ月かけて履きつぶしたそう。このエピソードだけでも、熱い…熱烈な監督ファンだけど、映画ポスター『シェフになろう、君のために』何人が気づくよ…原作読み直してみたけど、削られてるセリフも多いね。いい塩梅。
鎌谷ミキ

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