Ricola

マイ・ブロークン・マリコのRicolaのネタバレレビュー・内容・結末

マイ・ブロークン・マリコ(2022年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

自ら命を断った親友の遺骨を奪って旅に出るという、なかなか衝撃的な筋書きである。この旅は、トモヨ(永野芽郁)が亡き友マリコ(奈緒)に代わって行う「復讐劇」であり、トモヨが自分自身およびマリコとマリコとの関係を見つめ直す時間でもある。

この作品の軸にある親友の死という出来事から、シスターフッドと死者との対話が作品の主題であるととらえ、この2点を中心に語りたい。


前述した通り、この旅の主な目的はマリコを苦しめてきた男たち(特に父親)への復讐劇である。
冒頭のシーンで、中華料理店でラーメンをすすりながらテレビのニュースに耳を疑うトモヨが映し出される。報じられる親友の自殺に事実だかどうだかも受け入れきれない状態のトモヨのことなどつゆ知らず、聞こえてくるサラリーマンの会話の内容は、マリコの自殺のニュースに対して否定的なものである。
そもそも、マリコの遺骨を彼女の父親の目の前で奪い取るというトモヨの行為は、今まで散々マリコを搾取してきた彼女の父親から解放することとイコールの行為なのである。そして解放後トモヨは、マリコの生前果たせなかった抵抗および復讐を、彼女の代わりにやっていくのだ。

そして、死者であるマリコとの「対話」について。マリコの遺骨を奪ったトモヨは彼女にたしかに話しかけている。心の中だけでなく、実際に声に出し遺骨に向かって話しかける。
一緒に行きたいと生前マリコが言っていた海へと連れて行くことで、彼女の夢を死後であっても叶えようとする。
トモヨはもうマリコに一方的に話しかけることしかできないように思われるが、そうとも言い切れないのではないか。旅の道中、トモヨは幼い頃マリコからもらった何通もの手紙を読んで当時の思い出に思いを馳せる。手紙を読むという行為はまた、当時のマリコと再び話をするようでもあるのだ。
トモヨが手紙を読みマリコについて考える度に、学生時代の頃やつい最近の出来事に関する回想が何度も挿入される。

マリコはもう亡くなっていて遺骨だけが残されていても、マリコが「ここ」にいると思ってトモヨは常にマリコに「接して」いる。
応えの返ってこないマリコに話しかけ、遺骨を抱きかかえることは傷を負ってきたマリコを抱きしめることなのである。
トモヨがマリコの遺骨を抱きしめたままバスで眠るショットの直後に、幼い頃のマリコを抱きしめるトモヨが浮かび上がってくるショットに、トモヨの思いが投影されているように思える。

パワフルなトモヨの言動に沿って描かれるなかで、マリコとの関係性やマリコの負ってきた傷、そしてトモヨのやるせなさと生への意志などがしっかり焼き付けられている。
トモヨとマリコの最初で最後の旅行は、トモヨが現在地を見据えてマリコを送り出す儀式のようなものに感じられた。
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